2018年11月21日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」(28) 手代木功・塩野義製薬社長

会見メモ

塩野義製薬の手代木社長が、世界で生き残るための経営戦略や人材育成などについて話した。

社長就任時、低迷していた業績を回復させ、今や営業利益率は業界1位。今の標語は「慢心からReborn」。成功体験に溺れない冷静な分析と経営への熱意を明快な口調で語った。関西企業の東京志向の風潮下、「大阪から動くことは微塵も考えていない」と断言。

 

 

シオノギ製薬

 

 

司会 藤賀三雄委員 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

企業理念浸透に尽力、利益生む体質へ 

服部 尚 (朝日新聞記者)

 1985年には国内3位の売上高を誇った塩野義製薬だが、2010年には10位にまで落ち込んだ。そうした斜陽のさなかに、社長に就任して、社内の意識改革を手がけたという。

 当時、ベテラン層は、「自分たちはもともとすごかった」と過去の栄光をよりどころにし、マネジメントが悪いと他者のせいにしがちだった。一方で、若手にとってみれば、入社時から順位の低い企業。意識の格差が大きく、誇りを持ち、社員が心を合わせて闘う意思をもてるような再建を目指したという。

 企業理念を浸透させるために、奮闘ぶりを語った。3カ月に1回、社員に400字詰め原稿用紙で20枚程度の社長メッセージを送った。社長と社員が直接対話する場も設けた。メディアにも露出し、社員の家族や関係者にも、企業への理解が及ぶような願いを込めた。

 「メッセージの開封率は最初は半分にも満たなかった。対話しようにも上司から社員に余計なこと言うなと箝口令が敷かれていた」。当初は苦労していたが、徐々に愛社精神を醸成させていったという。

 同社は米製薬企業の買収がうまくいかなかったものの、高脂血症薬の特許切れなどを乗り切った。社員を半数に絞り込み、医薬品事業に特化。利益を生み出す経営体質への進化を進め、2017年度では売上高は業界10位ながら、営業利益は3位の位置を占めるまでになった。

 インフルエンザやHIVなどの感染症領域に絞り込み、画期的な新薬を開発する姿勢。その一つが、今春承認されたインフルエンザ治療薬のゾフルーザだ。本格的なインフルシーズンを控え、成果の行方が注目されている。


ゲスト / Guest

  • 手代木功 / Isao Teshirogi

    日本 / Japan

    塩野義製薬社長 / President and CEO, Shinogi & Co., Ltd.

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:28

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