2018年05月24日 13:15 〜 14:15 9階会見場
トビー・ランザー アフガニスタン担当国連事務総長特別副代表 会見

会見メモ

国連機関に入って26年間、各国の紛争地に赴任し、平和維持や人道支援活動に取り組んできた。タリバンとの和平交渉の具体的な進展はなく、爆破事件は現在も頻発しているが、社会は以前より安定し、国家統一政府は機能し始めた。希望のもてる時期になってきていると強調した。

 

司会 石川洋(日本記者クラブ)

通訳 吉國ゆり

 


会見リポート

忘却との闘い

竹内 幸史 (元朝日新聞記者)

 アフガニスタンに関わる者の間で、最重要なキーワードがある。「忘却との戦い」だ。

 1979年に旧ソ連軍がアフガンに侵攻し、ジハード(聖戦)と呼ばれる対ソ戦に突入したが、10年後に旧ソ連軍が撤兵すると、世界の関心はめっきり薄れた。だが、その後に続く内戦下、タリバーンが台頭し、アルカイダが勢力を広げ、2001年の「9.11」につながっていった。

 この日の会見も、報道陣の姿はまばらだった。新聞の国際面は米朝関係でいっぱいだから、「アフガンどころではない」のだろうが、アフガン情勢は「明日の世界情勢」に響く可能性があることを常に頭の隅に置いておきたい。

 その点、トビー・ランザー国連事務総長特別副代表の会見は、最前線のアフガン情勢を伝えるもので、今後の報道に多くのヒントがあった。

 治安問題は相変わらず深刻だ。反政府勢力による爆弾テロや攻撃が繰り返されている。昨年は地雷型の兵器による爆発事件だけでも月平均170件あり、多くの民間人の死傷者が出ている。

 その一方、国外からの帰還者は2016年以降200万人に達した。学校教育や医療施設へのアクセス増加、ポリオ撲滅が近いことなど社会環境の地道な改善が奏功している。政府組織の改革で若いテクノクラートの登用が増え、州政府では女性の副知事が3人誕生した。「34州のうち15州を訪問し、市民の声を聞いた。理想的ではないが、過去より良くなったとの声が多い」という。

 当面の課題は、3年もずれ込んでいる総選挙の実施だ。アシュラフ・ガニ大統領は投票の治安強化のためにも、タリバーンとの和平交渉を進めようとしている。タリバーンは農村のイナゴ対策など実利のある政策や教育改善については政府に協力する姿勢も見せ、対話の糸口がないわけでない。だが、和平については米国との直接交渉を望んでいると伝えられ、先行きは不透明だ。

 国連は11月28日にジュネーブでアフガン支援国会議を開き、国際社会の援助継続を呼びかける。日本政府も2012年に同様の会議を東京で開催し、積極関与の姿勢を見せたが、最近は存在感が薄れている。

 日本政府の厳しい安全対策のため、日本人はジャーナリストもNGO関係者も入国は制限されている。現地事情を皮膚感覚で知る人も、名物のケバブやシルクロードのメロンの美味を知る人も少なくなってきた。「アフガン、忘れまじ」である。


ゲスト / Guest

  • トビー・ランザー / Toby Lanzer

    アフガニスタン担当国連事務総長特別副代表 / Deputy Special Representative of the Secretary-General for the United Nations Assistance Mission in Afghanistan (UNAMA)

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