2018年05月22日 15:30 〜 16:45 9階会見場
「議論再燃!ベーシックインカム」(1) AI時代にはBIが不可欠 井上智洋・駒沢大学准教授

会見メモ

『AI時代の新・ベーシックインカム論』の著者。ベーシックインカム導入の必要性を、「AI時代で雇用が不安視される中、所得格差や低所得化を防ぐため」と説いた。財源は当面国債とし、月額7万円を提案した。「この額であれば、労働意欲をそぐことなく、就労を促すだろう」と。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「AIの時代こそBI導入を」

筋野茜 (共同通信社生活報道部)

 すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を給付するベーシックインカム(BI)。フィンランドで2017年から失業者2千人に月約6万8千円を支給する2年間の社会実験をスタートし、日本でも昨年の衆院選で希望の党が導入を公約に掲げて話題になった。

 井上智洋・駒沢大学准教授は、BIを老若男女問わずもらえる「みんな手当」と呼ぶ。

 BIはイランのほか、インド、オランダ、アメリカなどの一部で実験的な導入が検討されているという。一方、スイスはBI導入について国民投票を実施したが否決。フィンランドでも「実験」のまま12月に予定通り終了する見通しだ。

 世界に広がりそうで広がらないBIには、どうしても財源不足や労働意欲の低下に対する懸念がついて回る。

 井上氏の主張は明快だ。例えば1人月7万円の給付をした場合、全国民の給付総額は100兆円で、必ず増税が必要となる。ただ、増税しても給付で戻ってくるので、全国民の負担増は「実質0円」。貧困層ほどプラスになるセーフティーネットになるという。

 また、近い将来、事務労働を中心に中間層の仕事の多くが人工知能(AI)に取って代わられる。雇用が不安定になり、格差が広がる中で、最低限の所得保障としてBIの必要性は高まる。現行の生活保護は働くと給付が減らされ、就労のインセンティブが少ない。BIはもらっても働けば収入が増える。行政コストが減るメリットもあるとした。 

 会場からは「給付は7万円で足りるのか」との質問も。井上氏は「東京で暮らそうと思うからだ。家賃の安い地方なら豊かではないが十分暮らせる」と、にこやかに一刀両断した。

 正直、今の日本では一歩どころか十歩先をいく話だろう。しかし、少子高齢化や雇用の劣化で社会保障制度が行き詰まる中で、新しい選択肢となる余地はあると感じた。まずは「増税」と聞くだけで強い拒否反応を起こす国民の意識改革が先かもしれないが。

 


ゲスト / Guest

  • 井上智洋 / Tomohiro Inoue

    駒沢大学准教授 / Associate Professor, Komazawa University

研究テーマ:議論再燃!ベーシックインカム

研究会回数:1

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