2018年05月16日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「平成とは何だったのか」(1) ノンフィクション作家・保阪正康氏

会見メモ

「平成時代は、天皇、政治、災害の3つの組み合わせで語ることができる」という。

個別の特徴を次のように説明した。

*象徴天皇の具現化

*55年体制の完結と小選挙区比例代表並立制導入による国会議員の質の劣化

*東京電力福島原発事故に見られるような人災の天災へのすり替え

 

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「平成天皇論」講座

倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞社専門編集委員)

 来年4月に平成が終わるのを受けてシリーズ企画をスタートした。この30年を多角的に振り返り、現在の立ち位置を確認し、未来への視座を得ようと言う狙いだ。政治、経済、エネルギー、文化と各界の一級の識者を毎月数人ずつお呼びして、平成という時代を総括してもらう。

 初回は、近現代史ジャーナリストの第一人者である保阪正康さんに総括的な話をしていただいた。

 興味深かったのは、昭和と平成の差を国体と政体の位置関係で分析した点であった。保阪氏によると、制度面で見ると、戦前の明治憲法で政体の上に位置付けられた国体は、戦後の日本国憲法では政体と妥協的に並列された。ただ、帝王学で育った昭和天皇にはなお国体の下に政体があるとの意識が残っていた。だが、平成天皇は、むしろ政体の下に国体があるとの認識だ。それは、平成天皇が皇位継承した時に「日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と護憲を強調して以来一貫した姿勢だ。その意味するところは、昭和の反省から皇位継承のためにも二度と戦争という手段を選ばないという強い決意と、非戦を保証している日本国憲法体制(政体)を最上位に置く、という考えだ。

 保阪氏は改憲問題にも触れ、その戦争を手段として全否定する立場と、国家として戦争という手段を留保することとの間には、大きな亀裂ができる可能性があり、時間をかけ慎重に議論する必要があると述べた。

 保阪氏はまた平成という時代を解くキーワードとして「天皇」「政治」「災害」の3つを挙げた。天皇とは、戦争という手段を否定したことであり、憲法にある象徴天皇のあり方を全身全霊で作り上げたことだ。政治とは、55年体制が崩壊し一見進化したように見えたが、実は政治家の劣化が進んだ時代だった。平成の次は「ナショナリズム」「科学技術」が鍵になる、とも予告した。


ゲスト / Guest

  • 保阪正康 / Masayasu Hosaka

    日本 / Japan

    ノンフィクション作家 / Nonfiction Writer

研究テーマ:平成とは何だったのか

研究会回数:1

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