2018年04月06日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(4)李相哲・龍谷大学教授/五味洋治・東京新聞論説委員

会見メモ

『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)などの著書がある李相哲氏と、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)を3月に出版した五味洋治氏が、北朝鮮の意思決定メカニズム、権力構造について対論形式で考察した。

『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』

『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』

 

李相哲教授 龍谷大学研究者紹介ページ

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 


会見リポート

金正恩を支える頭脳集団

出石  直 (NHK解説委員室解説主幹)

 豊富な情報量と具体的な資料に基づく緻密な分析で知られる北朝鮮ウオッチャーのひとり。刺激的で示唆に富んだ会見だった。

 4月以降、中朝国境での人の往来が急増している。習近平国家主席と金正恩委員長がハグをしなかった。晩餐会で両首脳は同じ高さで杯を交わした。首脳会談に軍人の姿はなかった。李雪主夫人は中国語で習主席への贈答品の説明をした。

 ディテールを積み重ねて、現在の中朝関係を読み解いたのは圧巻だった。

 米朝首脳会談が決裂した場合、トランプ政権は軍事攻撃に踏み切る可能性がある。中国を間に立てることで軍事衝突を回避しようとしているのではないか。中国を電撃的に訪問した金委員長の狙いを、こう分析する。

 金委員長の大胆な政策を支えているのは「先軍革命小組」と呼ばれる頭脳集団だという。崔竜海(チェリョンヘ)副委員長、李洙ヨン(リスヨン)副委員長、金英哲(キムヨンチョル)統一戦線部長といった側近のほか、金委員長の政策決定に大きな影響を与えている可能性のある人物として、夫人の李雪主(リソルジュ)、妹の金与正(キムヨジョン)、異母姉の金雪松(キムソルソン)の3人の女性の名前を上げた。

 「北朝鮮が考えているのは“行動対行動“の原則に基づく”出口“としての非核化。非核化を口にしただけで本気でやるつもりはない」

 北朝鮮の戦略に巻き込まれないようくぎを刺した。

 李教授は、大学院でジャーナリズムを学び、研究者になる前に新聞記者をしていた経験もあるそうだ。北朝鮮という厄介な国を相手に、懸命に真実を見いだそうとする真摯な姿勢は大いに見習わねばならないと思った。


ゲスト / Guest

  • 李相哲

    龍谷大学教授 / Professor, Ryukoku University

  • 五味洋治 / Yoji Gomi

    東京新聞論説委員 / Editorial Writer, Tokyo Shimbun

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:4

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