会見リポート
2018年03月26日
18:30 〜 20:00
10階ホール
「被害者報道を考える」(2) 武内大徳弁護士
会見メモ
日弁連犯罪被害者支援委員会副委員長やNPO法人神奈川被害者支援センター副委員長を務める武内大徳(たけうち・ひろのり)弁護士が、弁護士による犯罪被害者への支援の現状や報道への要望などを話した。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
壁ではなく窓になりたい
河原 理子 (朝日新聞社会部記者)
「取材対応を最も必要とするのは事件直後。でも、大事件であればあるほど、被害者は弁護士に相談するどころじゃない」。かつてはそこが悩みだったという。しかしいまや、「川崎市中1殺害事件も、やまゆり園や座間の事件も、直後から被害者遺族に弁護士がついている」。それはなぜか、武内さん自身はどんな考えで報道対応をしているのか、ざっくばらんに話してくれた。
神奈川県では、通夜葬儀から弁護士が支援に入るケースが多くなったという。被害者遺族が弁護士による「報道対応」を希望した場合、警察から連絡を受けて、弁護士会が、お通夜と葬儀に弁護士を無料で派遣しているのだ。まったく無報酬。被害者の法律相談で県警と連携を深めるうち、「一番力を借りたいのは通夜葬儀」と聞いて、2010年ごろから試行に踏み切った。実際にしていることは、「施設内での取材撮影はお断りする。施設外の取材は、断る法的根拠がないので、配慮をお願いする」。
一方、被害者宅が報道陣に囲まれるメディアスクラムへの対策では、武内さんは、被害者の意向を確かめた上で、可能ならば、短くてもコメントを出すようにしてきたという。「コメントを出すから帰ってほしいと報道陣と取り引きする方が、状況をコントロールできるから」
幾多の現場を踏まえての話は、現実的だった。被害者支援弁護士の役割は何か。「弁護士は、被害者と、社会や報道機関との間の、壁にならないで、窓になってください」というある記者の言葉に共感したという。
私自身は、質疑で出た武内さんのこんな言葉を、重く受け止めた。
「被害者が明確に拒否してもなお実名で報道する場合は、なぜなのか、それに見合うだけの言葉を報道の皆さんが考えるべき。〈知る権利〉とか〈悲惨な事件を繰り返さない〉といった手垢にまみれた言葉では、もはや被害者は説得されない」
ゲスト / Guest
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武内大徳 / Hironori Takeuchi
弁護士 / Attorney-at-Law
研究テーマ:被害者報道を考える
研究会回数:2