2018年03月22日 18:00 〜 19:35 10階ホール
試写会「私はあなたのニグロではない」

会見メモ

公式サイト 5月12日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


会見リポート

「過去と現在」、相似に慄然

 1950~70年代に活躍したアメリカの黒人作家で公民権運動家のジェームズ・ボールドウィンが残した未完の原稿をもとに、現代アメリカに渦巻く人種差別の「本質」を描いたドキュメンタリー映画。昨年初め、トランプ政権が発足したばかりのアメリカで、異例のヒットを記録した秀作である。

 映画の下敷きになったボールドウィンの原稿は、わずか30㌻で執筆が止まった回顧録だ。だが、ここから93分の映像を作り上げたハイチ出身のラウル・ペック監督の手法は、緻密であると同時に斬新だ。

 映画の語りは、すべてボールドウィンの作品やインタビュー、講演録などで構成する。一方の映像は、長年にわたるボールドウィンの盟友で、公民権運動に立ち上がったキング牧師、マルコムX、メドガー・エヴァースの情熱と活動、そして死への軌跡を豊富な資料とともに追う。

 流血の歴史を振り返るカメラは、時に現代アメリカへと切り替わる。

 スクリーンの中で展開される現代の銃乱射事件や人種暴動を見た者は、ボールドウィンや彼の盟友たちが生きた時代から、少しも変化していない事実に慄然とするはずだ。

 映画には、もう一つの底本がある。アメリカ映画がいかに差別的な視点から作られているかを詳述したボールドウィンの評論『悪魔が映画をつくった』(邦訳・時事通信社)だ。

 監督は古き良き時代の名画の数々を観客に見せながら、ボールドウィンに繰り返し語らせる。アメリカ映画の中で黒人俳優は、「従順で信仰に厚い男」や「間抜けなおどけ者」のように、型にはまった役しか与えられなかった――と。

 劇場での鑑賞は、照明が明るくなるまで席にとどまりたい。作品で紹介された大量の映像と記録の出典を目にしてほしいからだ。エンドロールの大波にのまれた時、歴史の中に身を置いた実感がより強まるだろう。


読売新聞社調査研究本部  渡辺 覚

ゲスト / Guest

  • 私はあなたのニグロではない / I Am Not Your Negro

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