会見リポート
2017年11月10日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「著者と語る」廣中雅之 アジア・パシフィック・イニシアティブ・シニアフェロー 『軍人が政治家になってはいけない本当の理由 政軍関係を考える』(文春新書)
会見メモ
元航空自衛隊司令官。在米研究の成果を盛り込み「政軍関係(政治と軍事の関係)」を考察。「軍指導者は軍事専門性に基づき選択肢を政治指導者に提示すべし」「民主主義国家の軍人は政治指導者の決定に絶対服従」「内局官僚の文官統制は自衛隊活用を阻害」
司会:倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
会見リポート
政軍関係のあるべき姿
倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞社編集編成局専門編集委員)
変わったタイトルの本である。その中身も我々が常日頃聞くことのできなかった新しい中身を持っていた。
パソコンで「セイグンカンケイ」と打つと、「西軍」ないし「西郡」としか出てこないが、軍隊と政治の関係を包括的に意味する「政軍関係」は、欧米では「civil-military relations」という、政治指導者、軍隊の指揮官及び国民という三者のダイナミックな相互関係をさす、極めて定着した用語として使用されている、という。
著者の廣中さんの会見は、まずその用語の説明から始まったが、話の内容は、米国で最も尊敬されている軍人はあのマーシャルプランのマーシャルである、とか、日本で最も著名な軍人であるマッカーサー元帥や湾岸戦争を指揮したパウエル統合参謀本部議長はいずれも、政治的に動き過ぎ、あるいは判断し過ぎたことから軍人としての評価はそれほど高いわけではない、といった興味深いエピソードの満載であった。
廣中氏の原点は、東日本大震災でまさに政軍関係の結び目のようなところで自衛隊側の運用責任者をつとめたことにあった。いかに政治側に自衛隊への知識と信頼がないか、を身をもって知り、今後大地震や北朝鮮事態、日中関係の悪化など安保環境が変わった時に今のままの政軍関係では日本は持たない、という危機感を抱いた、という。その後2年にわたる米国留学などでその政軍関係のあるべき姿を模索し、今回の著作にその原論的な絵姿を書き記した。その言わんとすることは、政治は軍の高度な軍事専門性を重視、軍は政治決定には絶対的に服従するところに理想的な政軍関係がある、ということになろう。
今の日本の安全保障論議に欠落している視点といえる。
ゲスト / Guest
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廣中雅之 / Masayuki Hironaka
アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー / Senior Fellow, Asia Pacific Initiative
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船橋洋一 / Yoichi Funabashi
アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長 / Chairman, ,Asia Pacific Initiative
研究テーマ:軍人が政治家になってはいけない本当の理由 政軍関係を考える