2017年11月09日 16:00 〜 17:00 10階ホール
大林宣彦監督 会見

会見メモ

余命3カ月の宣告を受けながらも新作「花筐」を完成させた大林監督が、作品に込めた思いやこれまでの映画人生、病気になって感じたことなどについて語った。

 

「花筐」公式サイト

 

司会 川戸惠子 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)

 


会見リポート

厭戦超える独自の美意識

《序》 間もなく傘寿を迎える大林氏は自称「ベテランの少年」。好奇心の塊である。そして、めげない。新作『花筐』は「余命3カ月」と宣告された肺がんを「あやし」つつ、撮り上げた。入院先から会見場に現れ、「今、自覚症状はない。老化はあるけど」。いつもの笑顔と冗舌だった。

 

《破》 原作は檀一雄。太平洋戦争が始まる年の佐賀県唐津市。時代に抗し自由を求める若者たちと幸薄いマドンナの悲劇を描く。

 

 終戦時、7歳。その厭戦思想は数々の作品に通底する。だが、軍靴の高鳴りをこの国の中に聞き、今回は「戦争」を正面に据えた。

 

 無論、型通りの反戦ものではない。口づけの紅で印す日の丸、破爪の血、ドレス、ペディキュア、巨大なタイの山車。赤を随所に配し、死の予感を盛り上げる。気がつけば田の案山子の群れは行軍兵士に変じている。能の構成を模し、全編、黒沢明や太宰治、中原中也ら美の先達へのオマ―ジュに溢れている。

 

 時勢には至極敏感だ。撮影中、共謀罪成立の動きを見るや、戦前の治安維持法への嫌悪を画面に滲ませた。

 

 独特のこだわりもある。40余年前、『花筺』の最初の映画化は叶わなかった。やむなく、マドンナ役の鰐淵晴子を怪作(!)『HOUSE』に起用し、その美を映像にとどめた。新作で鰐淵の立場に身を置くのは常盤貴子。怪作を併せ観れば、2人の横顔が驚くほど重なることがわかる。

 

 今回、不治の病で死が迫る少女には「(友人の撮る)写真の中でしっかり生きる」と語らせた。鮮烈な記憶は風化しない、という大林の思いが凝縮されている。

 

《急》 さて、花筺という籠を彩った花々は散り果てた。だが、器の底にはまだ何かが残る。不気味に、雲の如く膨らむ気配だ。「130歳まで映画を作りたい」。そう語る大林が次に向き合うテーマは原爆である。


朝日新聞社出身  田上 幹夫

ゲスト / Guest

  • 大林宣彦 / Nobuhiko Obayashi

    日本 / Japan

    映画監督 / Movie Director

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