2017年07月21日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「2025年ショック どうする医療・介護」(4) 松田晋哉 産業医科大学 医学部 教授

会見メモ

2025年の医療提供体制を定める「地域医療構想」が各都道府県でまとまった。在宅医療や施設などの受け皿は確保できるのか? 政府の検討会で中心的役割を担った松田教授が構想の仕組みと展望について語った。

 

司会 梶本章 日本記者クラブ前企画委員(朝日新聞出身)


会見リポート

超高齢社会で果たす役割

米山 粛彦 (読売新聞東京本社医療部)

ニーズに沿って地域医療の形を作り直していく。医療提供体制の在り方を研究する産業医科大の松田晋哉教授が、超高齢社会に適した役割を医療機関が果たす重要性を訴えた。

 

これまで医療機関は手術や救急などに対応するベッド(病床)を多くそろえ、治療にあたってきた。現役世代を治療対象の中心に据え、「治す医療」に軸足を置いてきた。

 

団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には、地方を中心に人口減に伴って患者は減り、高齢者の割合が高まる。リハビリや在宅医療・介護との連携など、「治し支える医療」への転換が求められている。

 

政府の有識者調査会は2年前、25年に全国で必要な病床数は、現状の135万床より少ない115万~119万床という推計を出した。治し支える医療を重視した結果だった。治す医療の継続を望む病院は多いが、「患者のニーズに合わなければ、つぶれる。住民が困る」と、推計の中心メンバーの松田氏は強調した。

 

推計結果は在宅医療が進むと仮定し算出された。高齢者が安心して自宅や介護施設で過ごすには、肺炎や心不全が重症化した際に対応できる病院が欠かせない。医師が1人だけの診療所が多い中、地域の患者を24時間体制で支えるには医療機関同士が協力する仕組みも必要になる。

 

健康のための町づくりの視点も大切だ。一人暮らしの高齢者は家にこもりがちだ。松田氏は、住民が気軽に訪れる高齢者施設のレストラン、高齢者が子どもの宿題を手伝うカフェなど、会話が自然と生まれる行政や医療関係者らの工夫を紹介した。

 

交流で町は活気づく。高齢者が安心して暮らせる町づくりは魅力ある地域作りに直結すると教わった。ただ、将来像を描く仕事を人任せにしては明るい未来はひらけない。松田氏は「自分事として考えるべき」と繰り返し述べた。それが住民の役割だと肝に銘じたい。


ゲスト / Guest

  • 松田晋哉 / Shinya Matsuda

    日本 / Japan

    産業医科大学教授 / Professor, University of Occupational and Environmental Health

研究テーマ:2025年ショック どうする医療・介護

研究会回数:4

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