2017年09月25日 10:00 〜 11:30 10階ホール
ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン 駐日ドイツ大使 会見 「連邦議会選挙後のドイツ」

会見メモ

ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン 駐日ドイツ大使が、9月24日(現地時間)に行われたドイツ連邦議会選挙の結果について解説した。極右といわれる「ドイツのための選択肢(AfD)が13%近い票を得て議席を獲得したことについて「驚きはない」と触れながら、「ドイツ国民の87%は民主主義を支持している」と強調した。

 

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳 ベアーテ・フォン・デア・オステン(ドイツ大使館)


会見リポート

「民主主義」「開かれた国」は不変

二村 伸 (NHK解説委員)

 大勢判明からまもなく、各国駐在ドイツ大使の中でいち早く会見に臨み、与党の大幅議席減と右派政党AfD(ドイツのための選択肢)の躍進という厳しい結果にも、「国民の87%が民主主義と欧州統合を推進する政党に票を投じた」として政府の政策に影響はないことを強調、「AfDの全員が極右・ネオナチではない」とも述べ、懸念の払拭に努めた。

 

 「選挙結果は驚きではない」とはいえ、いつもより表情は硬かった。反イスラムやユーロ離脱を掲げ、ナチス時代の責任を回避する発言まで飛び出す過激な政党に8人に1人が票を投じた事実は衝撃である。旧東独地域では得票率が20%を超え、社会民主党を上回る勢力となった。

 

 英国のEU離脱やトランプ政権発足といったポピュリズムのうねりに対する防波堤とされたドイツもまた大きな試練に立たされている。「グローバル化への失望や大量の難民流入への不安や不満を持つ人たちに対して政治家や外交官、さらにはメディアが正面から取り組んでいかねばならない」

 

 連立の行方については、社会民主党が下野する方針を示したため、キリスト教民主・社会同盟と自由民主党、緑の党の黒黄緑3党による「ジャマイカ連立」の可能性が高い。「どんな連立になろうと民主主義の理念を追求し、世界に開かれた国であることは変わらない」として今後も欧州統合や日独協力関係を重視する姿勢を強調した。ただ、各党の政策は大きく異なるだけに連立交渉は難航必至で、12月末までかかるのではないかとの見通しを示した。

 

 4期目の任期を全うすればコール元首相に並ぶ16年の長期政権となるメルケル首相だが、次の4年はこれまで以上に厳しいものになりそうだ。駐日大使として3年半、記者クラブ6回目の“常連”は、いつものように明快で丁寧な受け答えだったが、次の会見も歯切れの良い答弁が聞けるのだろうか。


ゲスト / Guest

  • ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン / Hans Carl FREIHERR VON WERTHERN

    ドイツ / Germany

    駐日ドイツ大使 / German Ambassador to Japan

研究テーマ:連邦議会選挙後のドイツ

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