2017年08月07日 10:30 〜 11:45 会見場
「ネット時代のジャーナリズム」宍戸常寿 東京大学大学院教授

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会見リポート

最大の倫理違反は「萎縮」  SNS時代に要請されることとは

  田中 徹 ( 北海道新聞社メディア委員(東京駐在))

 

新聞部数やテレビ視聴時間の低下に歯止めがかからない。

代わって人々の消費時間を奪っているのがネット、特にSNSだ。

「公論空間でネットが大きな役割を果たしており、マスメディアの地位低下は明らか。もはや、一元的な情報収集・発信の主体ではあり得ない」という事実から、目をそらすことはできない。

 

メディア環境の多様化は一般に歓迎すべきこと。

従来のメディアが包摂しきれなかった意見や利益、価値に気づきやすくなった。オールドメディアの建前と現実の乖離も可視化された。

しかし、副作用も顕著だ。それが、フェイク・ニュースの奔流やポスト・トゥルース化といわれる社会状況だろう。こうした認識の下、見直し・改善策は多岐にわたる。

 

ニュースの価値基準、なぜ報じるのか・報じないのかの説明責任。公人の会見、開示請求した資料を全文公開すること。ただし、一次情報をただ流すだけではない、分析して物事の文脈の中で理解できるような質の高い報道。また、速報性と真実性のトレードオフの承認。さらに、SNSは炎上を過度に恐れるのではなく積極的に使うこと、フリーランスやNPO、ポータルサイトなどとの連携―などだ。

 

ただし、ジャーナリズム組織には変わらぬ原則がある。

「萎縮して報道すべきことをしないこと、これこそ、最大の倫理違反」という指摘は、本義を忘れない限り、オールドメディアにも生き残る道があることも示していそうだ。

 

講師の名前は存じていたが今回、筆者と同じ40代半ばであることを知った。

オールドメディアで育ち、20代からネットに触れてきた、社会のボリュームゾーンである団塊ジュニア。厳しい現状認識と提言は、オールドメディアに対する社会の期待と要請でもあると受け止めたい。


ゲスト / Guest

  • 宍戸常寿

    東京大学大学院教授

研究テーマ:実名・匿名報道や改正個人情報保護法施行後の事件報道への影響

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