2017年06月02日 16:30 〜 18:00 9階会見場
「組織犯罪処罰法改正案について」(2) 板橋功 公共政策調査会研究センター長

会見メモ

所属組織は警察庁のシンクタンクとして設立されたが「研究の独立は確保されており政府批判もする」。改正案には「共謀罪よりも国際組織犯罪防止条約締結のために必要」と主張。「テロ対策の名前は不可解。GPS捜査の法整備などテロ対策は別途やるべき」

 

司会 傍示文昭 日本記者クラブ企画委員(西日本新聞)


会見リポート

自由と安全のバランスで考える「共謀罪」

坂口 祐一 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

「共謀罪」の要件を見直し、テロ等準備罪の導入を目指す組織犯罪処罰法改正案。5月23日に衆院を通過し、論戦の舞台は参院に移ったものの、与野党間の議論はかみ合わないまま。国民の理解が深まっているとは依然、言いがたい状況だ。

 

そんななか、法案に反対する意見を述べた一橋大教授、葛野尋之さんに続き、テロ研究の第一人者である板橋さんが会見に登場した。

 

順序立てて説明する板橋さんの主張は単純明快。国際的な組織犯罪と戦うには、各国と足並みをそろえなければならない → そのために国際組織犯罪防止条約を早期に締結する必要がある → であれば条約が求めている「共謀罪」を導入すべきだ――ということに尽きる。

 

このあたりは賛成派の多くの論客と同じ理屈である。興味深いのはここから。各国のテロ対策を詳細に見てきた立場から、今回の法改正で「テロ等準備罪という名称がなぜ出てきたのか理解できない」と疑問を投げかけた。

 

法案はあくまで組織犯罪処罰法の改正案であり、もともとテロ対策が主ではない。「テロ」「オリンピック」を持ち出したことでかえって混乱を招いてしまったのではないか、という指摘である。

 

捜査機関による恣意的運用の懸念については、「現行制度下での歯止めを議論すべき」と述べたが、会場からは「公安委員会制度は形骸化している」といった疑問の声があった。警察や司法をどこまで信頼するかという議論は抽象論になりがちで、こうした問題の難しさを改めて感じさせる。板橋さんが結語に掲げた「自由と安全のバランス」をどこでとるかという視点で、これからも考えていきたい。

 

テレビ画面では冷静沈着、立て板に水とばかりに解説する板橋さん。この日の会見には詳細なレジュメを用意し、それを読み込むように解説していった。終了後に感想をうかがうと、「日本記者クラブでの講演ということで緊張した。しっかり準備をしてきました」。


ゲスト / Guest

  • 板橋功 / Isao Itabashi

    日本 / Japan

    公共政策調査会研究センター長 / Council for Public Policy

研究テーマ:組織犯罪処罰法改正案について

研究会回数:2

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