2016年07月28日 15:30 〜 17:00 9階会見場
著者と語る『福島第一原発廃炉図鑑』開沼博氏/竜田一人氏/吉川彰浩氏

会見メモ

『福島第一原発廃炉図鑑』編著者の開沼博 立命館大学衣笠総合研究機構准教授、吉川彰浩 一般社団法人AFW代表理事、福島第一原発作業ルポ漫画『いちえふ』の漫画家・竜田一人の3氏が会見し、記者の質問に答えた。
左から吉川氏、竜田氏、開沼氏
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

福島の事実から目を背けるな

小出 重幸 (読売新聞出身)

東京電力福島第一原発事故から5年余になるが、廃炉作業の実態や、放射線汚染の現実が、なかなか伝わってこない。背景には、事故を早く忘れたいという人々の心理とともに、玉石混交のメディア・ネット情報の洪水に、正確な状況が私たちに見えにくくなっていることが挙げられる。

 

社会学者の開沼博・立命館大学准教授、漫画家で元原発作業員の竜田一人さん(仮名)、元東電技術者で、廃炉作業を外から支える一般社団法人「AFW」代表の吉川彰浩さん。3人は、立場の違いはありながら、「福島への誤解、無理解があまりに多い。本当のことから、目を背けないでほしい」という共通の思いで、『廃炉図鑑』を編集した。

 

原発周囲まで生活圏が回復している実情を無視し、マレーシア人ジャーナリストが7月に欧米のメディアに配信した“福島ゴーストタウン報道”などに触れ、開沼さんは「事実をゆがめた発信が、福島を世界の中で孤立させ、理不尽な差別の原因となっている」と指摘。自分たちで地道な発信をすると同時に、「声」をもたない福島の人たちと東京、あるいは世界をつなぐ拠点として、「廃炉ラボ」という独立調査研究プロジェクトを立ち上げた。2016年6月に出版された『廃炉図鑑』は、このプロジェクトで「人とつながる手がかりとしての百科事典」だという。

 

事故を起こした原発の現状、進行中の廃炉プロセス、作業員の心情から、放射線の現状、周辺地域の人々の生活や表情を伝える。人気漫画「いちえふ」作者の竜田さんのイラストや漫画を折り込みながら、読者の興味を自然につなぎ止める工夫も。

 

「廃炉作業に携わる数千人の作業員の半数は、地元被災地の人たちだということを知ってほしい」と、吉川さん。

 

冷静に、正確に、でもユーモアを忘れずに……英語での発信も予定しており、福島を直接世界に伝える、貴重なコミュニケーション活動だと受け止めた。


ゲスト / Guest

  • 開沼博氏/竜田一人氏/吉川彰浩氏

研究テーマ:著者と語る

ページのTOPへ