2016年08月02日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「国連と日本人」⑪黒田順子 米マーシー大学客員教授

会見メモ

東ティモール国連平和維持活動官房長官、国連開発計画平和構築アドバイザーなど長く国連機関に務めた黒田氏が会見し、記者の質問に答えた。
司会 中井良則 日本記者クラブ顧問


会見リポート

国連平和活動とメディエーターの仕事

中井 良則 (日本記者クラブ顧問)

メディエーターという仕事がある。仲介人と訳すのだろうか。日本ではあまり聞いたことがない。紛争当事者の話し合いを助け、理解を促し、当事者による合意・解決にたどり着くよう協力する。家族の不和、職場のトラブル、さらに国家や民族の対立まで、トレーニングを受けたメディエーターなら同じ原理で対応できるらしい。

 

国連機関で30年間働いた黒田順子さんはニューヨーク州認定のメディエーターの資格も持つ。東ティモールの国連平和維持活動・平和構築活動ではまさにメディエーターとして働き、紛争再燃を防いだ。

 

「勘を信じて機転を働かせることが重要です。起こりそうになった紛争を食い止めることができたことを誇りに思います」と振り返った。

 

黒田さんは2004年から06年、東ティモールの国連ミッションで官房長(チーフ・オブ・スタッフ)を務めた。独立したばかりの新しい政府の中で対立が起こったのは2006年。軍の内部で独立運動参加者と独立後に加わった者の間で待遇や昇進をめぐり不満が表面化した。暴動が起こり、15万人が避難民となる危機に発展した。黒田さんは国連事務総長特別代表代行とともに大統領に会い、大統領が国民にメッセージを出す方法を話しあった。事態の悪化を未然に防ぐことができた。

 

「何か起こりそうな時、敏感に早く対応する。緊張が高まった時を見極めて介入する。自分の意見を言わず、当事者の理解を促進するのです」

 

「そうはいっても、夫婦げんかをやめさせることとは違うでしょう」と聞くと「個人間でも働く場所でも民族間でも、同じスキルを使えます。メディエーターは当事者間のコミュニケーションをとり、問題点や気持ちを認識し、聞いたことを自分で言い直す。価値観の違いが互いにわかるようになる。そういった勘というか第六感、インスティンクトは経験で養われます」という。

 

国連は巨大な官僚機構。職員の行動はマニュアルや規則で定められる。「でも現場にいくと、それではうまくいかない。いわれたことをやっているだけでは、その国の役には立たないのです」

 

メディエーターは日本人に向いている、と強調した。「日本人は自分の意見はあまりいわないかもしれないが、耳を傾けるのは得意です。相手のしぐさや表情から意味を読み取る。これは日本人の強みだし、紛争解決のカギとなる」

 

紛争の発展段階と解決プロセスの説明も興味深かった。紛争とは緊張から始まり、対立、危機へと進展する。紛争への対処は、非公式の話し合いから交渉に入り、第三者の仲介・調停までは「当事者による決定」で解決につながる。それで終わらないと「外部による決定」に移り仲裁裁判や裁決に移る。それでも合意に至らないなら「力による決定」つまり武力紛争に突入してしまう。

 

「外部からやれ、といわれると本人は抵抗する。押し付けてはいけない。本人に考えて(解決策を)見つけてもらう。早く決めてはいけないのです」

 

夫婦の平和も世界の平和も、当事者が時間をかけて話し合い、第三者の仲介人に間に入ってもらえば道が開く。いわれてみれば当たり前の方法だが、功を奏すると期待したい。


ゲスト / Guest

  • 黒田順子 / Michiko Kuroda

    日本 / Japan

    米マーシー大学客員教授 / Visiting Professor and Research Fellow, Mercy College

研究テーマ:国連と日本人

研究会回数:11

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