2016年06月29日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「熊本の教訓と首都の備え」平田直 東京大学地震研究所地震予知研究センター長

会見メモ

東大地震研究所地震予知センター長のほか防災教育普及協会会長などを務める平田教授が熊本地震の分析や首都圏で予想される地震などについて解説し、記者の質問に答えた。
司会 山﨑登 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

〝いずれ来る〟に備えて

◎熊本から東京へ

 

東日本大震災、熊本地震と「想定外」の被害が続くなか「30年以内に起きる確率70%」とされる首都直下地震についての企画が始まった。

 

6月29日には『首都直下地震』(岩波新書)の著者、平田直・東大地震研教授が「熊本の教訓と首都の備え」と題して会見した。

 

熊本地震は28時間に2度も震度7が襲い、被害を大きくした。平田教授は連続地震について「耐震建築でも強い揺れが続くと危険。大きい地震のあと、48時間は家に帰らないように」と警告し、現行耐震基準は最低限度だと過信を戒めた。

 

現在、地震の研究、調査は文部科学省、被害想定は内閣府の中央防災会議が担当するなど、政府内でも防災機能が分散していることを例に「地震研究と防災対策の一致が必要だ」と指摘した。

 

続いて7月8日には、東京都危機管理監の田邉揮司良氏が、「首都直下地震への備え」の題で都の対応を解説した。

 

熊本の被災地に対する都の救援活動が、被災直後の救出、給水袋・簡易トイレなど支援物資の供給、緊急医療などから、児童、生徒の心のケアまで、さまざまな形で行われたことが詳しく説明された。首都直下地震への実地訓練でもあったのだろう。

 

参加者からは、非常時の都職員の参集体制、家庭での減災対策、水害との複合災害の危険性など、さまざまな角度から質問が出た。

 

=======

◎「東京で一番危険なまち」

 

7月4日には朝から、墨田、荒川両区で、建物倒壊、火災延焼、消火活動困難など、震災のとき被災する恐れが大きいまちを視察した。

 

墨田区では菅原幸弘防災課長らから区の対策について説明を受けたあと、東向島5丁目から玉の井いろは通りを越えて墨田3丁目の東武線鐘ヶ淵駅まで、住宅、アパート、町工場、商店など木造建物密集地域を1時間歩いた。

 

鐘ヶ淵駅から西へ行くと、隅田川沿いに1・2㌔にわたって高さ40㍍13階建ての集合住宅が連なる白鬚東防災街区に突き当たる。延焼から建物を守る防火シャッターや放水装置、災害時には4万人の避難場所になる東白鬚公園などがある。まとまった防災街区としては荒川区南千住の白鬚西防災街区とともに、都内でも珍しい存在だ。

 

午後1時すぎから荒川区役所で、西川太一郎区長と会見。水道が止まった場合に備えて、地下水や河川水を消火用に使う「永久水利施設」など、同区独自の取り組みについて聞いた。

 

この日、有志の区長が増田寛也氏に都知事選挙出馬の要請をしたことから、質問がそちらに集まったのはまあ、当たり前か。

 

会見後、東京都の「地震による地域危険度」総合1位の同区町屋4丁目へ向かい、気温34度という暑さのなか、東風谷博・尾久消防団長などの案内で曲がりくねった細い道や、人ひとり通り抜けるのがやっとの路地をたどった。高層の建物が林立する東京とは異なるまちがそこにはあることを体感した。

 

東京新聞出身 塚田 博康

 

(この会見リポートは7月4日開催の見学会「首都直下地震-備えの現場を歩く」および7月8日開催の田邉揮司良・東京都危機管理監会見との統合版です)


ゲスト / Guest

  • 平田直 / Naoshi Hirata

    日本 / Japan

    東京大学地震研究所地震予知研究センター長 / Tokyo University (Earthquake Prediction Research Center)

研究テーマ:熊本の教訓と首都の備え

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ