2016年02月12日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「沖縄から考える」⑩ 川瀬光義 京都府立大学教授

会見メモ

財政学が専門の川瀬教授が沖縄の経済・財政の特徴や課題などについて話し、記者の質問に答えた。
司会 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

「新基地拒否でも財政運営に不都合なし」

岩城 浩幸 (TBSメディア総合研究所取締役編集長)

日本のNIMBY(Not In My Back Yard)立地政策は、①全国民的課題としない、②「理解」を求める対象を極力限定する、③経済状況が厳しいという‘弱み’につけこむ「振興」のための財政資金投入、以上の3点にまとめられるという。この視点から特に軍用地料、そして特定防衛施設周辺整備交付金にみる公共施設整備のための特別な財政措置、2つの側面に絞って解明した。

 

軍用地料問題で、沖縄とその他の地域の違いは、誰の土地かということ。9割弱が国有地という沖縄以外のケースと異なり、沖縄では国、自治体、民有地が3分の1ずつだ。日米安保協定で、国有地は国がアメリカに無償提供するが、非国有地の場合は地権者と国が協議する。これが、経済的意味での地代ではなく政治価格としての軍用地料だ。これが、1972年の復帰でそれまでの数倍に増え、その後、毎年、「入ってくる、減らない」という実態が続いていることが明らかにされた。

 

軍用地を提供させられている地権者や自治体に、「減らない」財政支出を行うことによって、地域や自治体は分断されてきた。また「補償」とすれば、公平さを欠くことになる。被害や機会の費用はすべての住民に及ぶ可能性があるからだと指摘する。

 

 特定防衛施設周辺整備交付金にみる公共施設整備のための特別な財政措置。74年に新設されたものだが、77年の立川飛行場の返還完了後、今日まで大規模な米軍基地返還はない。だが、この「特防」交付金の総予算額は、減額されたことはない。財政政策としてみても、必要に応じた「量出制入」原則に反するうえ、政策の効果が見込めない、そもそも防衛省の仕事なのか、という指摘につながる。

 

 再編交付金や再編関連特別地域支援事業補助金を見ると、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法は、特防交付金の枠組みをいっそう特異化したもので、防衛省が必要と認めない限り、対象とはならないことを明らかにする。そして、再編関連特別地域支援事業補助金は、地方自治をないがしろにする、自治体予算で実施可能と解説した。

 

 結局、根拠や効果が不明確な財政支出で維持されてきた基地であり、安全保障問題を「基地受け入れ」問題に矮小化し、再編交付金で政治的意見の相違による差別を公然化したと結論した。

 

 政治的にさまざまな風に翻弄されているようで、財政問題から見ると一本の方向性が存在し続けていること、普天間と辺野古のほかに沖縄と岩国という視点があることなども忘れてはいけないと、強く感じた。「新基地を拒否しても自治体の財政運営に関して不都合はない」という結論をかみしめたい。


ゲスト / Guest

  • 川瀬光義 / Mitsuyoshi Kawase

    日本 / Japan

    京都府立大学教授 / Professor, Kyoto Prefectural University

研究テーマ:沖縄から考える

研究会回数:10

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