2016年02月05日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「変わるアメリカ・変わらないアメリカ 大統領選」①古矢旬 北海商科大学教授「ポピュリズム」

会見メモ

古矢旬 北海商科大学教授が米国のポピュリズムについて話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「ポピュリズム」がキーワード 米大統領選を読み解く

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社編集委員室長)

2016年米大統領選の党指名候補選びが始まった。カラフルな候補が言葉と思想を戦わせている。日本記者クラブでも大統領選に表れるアメリカの変容ぶりを浮き彫りにする研究会「変わるアメリカ・変わらないアメリカ」をスタートさせた。

 

トップバッター・古矢旬さんにお願いしたのは「米政治とポピュリズム」。共和党のトランプ現象、民主党のサンダース現象はポピュリズム抜きには語れない。

 

アメリカ学の大家だけあって古矢さんは、ポピュリズムの起源を米憲法の前文にある「ピープル」に求める。それは人民主権の確立をもたらしたが、同時に独立した13州を一つにまとめるための「発明」だった。誰を指すのか、そしてどう統治するのか、という「永遠の課題」が初めからあった。

 

19世紀末の産業社会の出現はアメリカ社会を変え人民主権の空洞化を招き、巨大組織・エリートとの対抗というポピュリズムが興隆した。1892年には人民党が誕生している。戦後のアメリカで起きたマッカーシズムや反知性主義、人種問題をめぐるポピュリズムなど、我々にもいくらかの知識がある。

 

それにしても、今年の大統領選でのポピュリズムの興隆をどう見るべきだろうか。1980年代のレーガノミクスに始まった経済政策は格差の拡大を生み、不安、不満の解消としての「敵探し」がイスラム系やメキシコ系移民に向かっている。

 

民主党の側もレーガン政治への妥協として保守主義を取り込んだニューデモクラッツが格差を解決できずに、今、社会主義者とも言われるサンダース上院議員が受け皿となっている。米政治の会話の中で、社会主義に関連する言葉をここまで社会に受容させているのはサンダース氏が初めてだ。

 

歴史をさかのぼり、かつ現代の文脈で説明する古矢さんはポピュリズムには今2つの課題があるという。一つは内外に「敵」をつくり上げることなしに、多様な人民を政治へ動員できるか。もう一つは、既存の民主政治の失敗を突くだけではなく、平等社会を末端の運動から積み上げることができるか。

 

アメリカだけでなく、欧州、アジアにもポピュリズムが広がる。この2つは普遍的であり、反芻する問いかけだった。


ゲスト / Guest

  • 古矢旬 / Jun Furuya

    日本 / Japan

    北海商科大学教授 / Professor, Hokkai School of Commerce

研究テーマ:変わるアメリカ・変わらないアメリカ 大統領選

研究会回数:1

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