会見リポート
2015年10月29日
15:00 〜 16:30
9階会見場
柴田優呼 ニュージーランド・オタゴ大学助教授 「戦後70年 語る・問う」(35)原爆と日米関係
会見メモ
『“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する――隠蔽されてきた日米共犯関係の原点』(作品社)の著者、柴田優呼 オタゴ大学助教授が話し、記者の質問に答えた。
資料
司会 中井良則 日本記者クラブ専務理事
会見リポート
被爆者の多様な声を世界に
船津 靖 (共同通信編集・論説委員)
戦後初期、原爆による「爆撃」「攻撃」「空襲」「空爆」といった表現があったそうだ。原爆「投下」という現在一般に使われる言葉は、投下に至るアメリカの意思と責任をぼかし、原爆による民間人大量虐殺を感情的に中和する―と柴田助教授は指摘した。
専門はポスト・コロニアリズムのテキスト分析。被爆体験を描いた作品として有名なハーシーの『ヒロシマ』や永井隆の『長崎の鐘』も、原爆を「宇宙や太陽の力」と結びつけて使用を正当化したトルーマン声明に通じる言説構造を持つ、と主張。被爆者の多様な声を、日本のためではなく世界のために、日本の閉じた言語空間の外で、伝えていくことの重要性を力説した。
米大統領が広島を、日本の首相が真珠湾をそれぞれ訪問し真の和解を、という松尾文夫氏の提案についての質問に「良いと思う。ただオバマ大統領は被害者に祈りを捧げればよく、日本や日本人に謝る必要はない」と述べ、被爆者と日本人一般を明確に分けた。
会見後、著書『“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する』を通読した。被爆や強制収容所などで「むきだしの生」を強いられた人々の体験を代理表象する困難を、強く意識しているのが印象的だった。
ゲスト / Guest
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柴田優呼 / Yuko Shibata
ニュージーランド・オタゴ大学助教授 / Lecturer – Japanese Programme, University of Otago, New Zealand
研究テーマ:戦後70年 語る・問う
研究会回数:35