2014年11月14日 14:00 〜 15:30 10階ホール 
山田太一さん・脚本家「戦後70年 語る・問う」⑤

会見メモ

戦後70年 語る・問う (5)

松竹の助監督を経て、昭和40年代から脚本家としてテレビドラマに関わってきた経験や自信のドラマ論について語った。「マイナスを遠ざけ、忌避しようとする現代社会にあって、マイナス部分を書き入れた人間を描くことこそテレビドラマの役割だと思う」と。

司会 川戸惠子 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビシニアコメンテーター)


会見リポート

鋭い洞察力で社会の「マイナス」に分け入る

東日本大震災後、NHKや民放で多くのドキュメンタリーが作られたが、震災を題材にしたドラマは極めて少ない。2月にテレビ朝日で放送された山田太一さんの「時は立ちどまらない」はその1つだ。被災地でも、津波で肉親や家を失った人と被災を免れた人では、打撃の大きさや心の傷が異なる。2つの家族で交錯する複雑な思いを浮き彫りにした。

 

「被災者は自分のせいじゃないのに、誰にも『ありがとう、ありがとう』と言わなければならない無念さを抱えている。家族が助かった人にしても、どこかに後ろめたさがある。ドキュメンタリーはそういうマイナスの部分に立ち入れず、ドラマこそが描くべき領域と思いましてね」

 

山田さんの話は、松竹の助監督時代、テレビの世界に転じたいきさつを経て、「マイナス」という言葉がキーワードになった。核家族の崩壊と再出発を描いた代表作の「岸辺のアルバム」も、「戦後社会の澱(おり)のようなものが一家族にたまっている」とのモチーフから作られたという。

 

ごく普通の人間や家族を通して、社会の現実や時代の空気をリアルに描いてきた。穏やかな語り口で、時にユーモアを交じえながらも、現代への洞察力は相変わらず鋭い。

 

「僕より上の世代は軍隊を経験し、人には言えない闇を心の中に閉じ込めた。戦後の混乱期にも多くのマイナスがあった。いまも別のマイナスがたくさんあるのに、みんなが見ないようにしている。いまの若い人は優しいと言われるが、何となく孤立しているとか、頑張りたくても頑張れないという悩みがある。そこに分け入るのがドラマの役割じゃないか」

 

会場からは、政治への関心など幅広い質問が飛び出した。松竹時代に仕えた木下恵介監督への評価を聞かれると、「悪いところもいいと言う義理はないが、口にしないくらいの義理はありますよね」と笑わせた。


読売新聞出身 鈴木 嘉一

ゲスト / Guest

  • 山田太一氏 / Taichi Yamada

    日本 / Japan

    脚本家 / Scriptwriter

    研究テーマ:戦後70年 語る・問う

    研究会回数:5

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