会見リポート
2013年11月19日
16:00 〜 17:00
宴会場(9階)
遠藤雄幸 川内村長 記者会見
会見メモ
川内村の遠藤雄幸村長は、昨年1月の帰村宣言から現在まで、村の人口の53%にあたる、1460人が帰村していると述べた。ただし、半分は避難生活を続けており、こどもは25%しか戻ってきていない状況である、とも。この背景には、低線量被爆の影響など健康への心配、職場の確保、第一原発が制御されていないなどの影響がある、とした。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
それぞれが抱える厳しい現実 地域再生の難しさ訴える
森 一夫 (日本経済新聞出身)
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、避難を余儀なくされた周辺住民の多くはいまだに故郷に帰れない。福島第一原発と同第二原発がある双葉郡の5つの町村長の会見は、同地域の再生の困難さをあらためて示した。
浪江町の馬場町長は「一昨年の震災の時から、時計の針が完全に止まったような状況だ」と訴える。除染が遅れているため「復旧が全く進んでいない」。被災した年の町民調査では「町に戻りたい」との意向が60%あったが、今年8月には20%まで減り、「戻らない」が35%に上った。
同じく全町民が避難している富岡町の宮本町長は「町民がいつ帰れるか、私には答えられない」と涙ぐむ。「富岡町は存亡の機にある」という現実が進行している。9月の調査で「帰還」を希望した12%の回答者の多くは60歳以上で、「若い人のほとんどは帰る希望を持っていない」と言う。
各地に分散避難してコミュニティーが崩壊しただけでなく、家族も高齢者と子育て世代が世帯を分けて住まざるを得ない状況にある。早急に必要なのは厳しい現実に即した政策だ。帰還困難区域が広い大熊町の渡辺町長は国に対して「帰れないなら、その人たちに新たにどのような支援があるのかも併せて示してほしい」と求める。
楢葉町は大半が避難指示解除準備区域で、「生活区域の除染は今年度中に完了する」と語る松本町長は「復興のモデルタウン」を目指すが、課題は多い。「雇用がなければ戻れない」。除染後の廃棄物の保管庫や中間貯蔵施設の決定もこれからだ。
帰村宣言をした川内村でも47%はまだ帰れない。遠藤村長は「低線量被ばくへの心配や、働く場がないなどが理由」とみる。今後「双葉郡の他の町村に戻れない人たちの受け皿役を果たしたい。川内村だけ帰ってもハッピーエンドではない」と語る。
いまさらだが、個々の町村を超えた問題の解決を先送りしてきた政治の責任が問われる。
ゲスト / Guest
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遠藤雄幸 / Yuko Endo
川内村長 / Mayor of Kawauchi Township, Fukushima
研究テーマ:福島県双葉郡8町村のいま