2013年10月23日 18:30 〜 20:00 宴会場(9階) 
著者と語る『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』  村木厚子・厚生労働事務次官 

会見メモ

郵便不正事件で無罪が確定した村木厚子・厚生労働事務次官が著書『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』(中公新書 10.25刊行)について話し質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 瀬口晴義(東京新聞)


会見リポート

検察改革 実体験交え求める

瀬口 晴義 (企画委員 東京新聞社会部長)

2009年6月、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長だった村木厚子さんが大阪地検特捜部に逮捕された時、私は東京の司法記者クラブのキャップだった。担当する東京地検特捜部が停滞していた時で、「大阪の特捜はいい事件をやったな」と対岸の火事のように思っていた。捜査の過程で、信じ難い証拠の偽造、事実をねじ曲げて創作した調書の数々があったとは想像もできずに。


164日間の拘置生活。執拗かつ巧妙な特捜検事の取り調べに屈しなかった女性はどんな人なのか。厚労省から当クラブに歩いてやってきた村木さんは、見たままの印象の女性だった。飾り気のない素朴さの中に気持ちの強さを感じさせる。あれだけ肉体的、精神的な苦痛を味わされながら、「検察は信頼したいし、期待している。今回の事件も、個人の検事が悪いことをしたのではなく、犯人を捕まえたいという組織の論理にドライブがかかってしまうことが問題。何度も引き返すチャンスがあったのに求刑まで行ってしまった」と、システムの改革を求めた。


村木さんが『私は負けない』(中央公論新社)を刊行したきっかけはPC遠隔操作事件だ。無実の4人が逮捕され、まったく身に覚えがないのに2人が「自白」した。村木さんが逮捕された郵便不正事件では、任意の取り調べを受けた厚労省の関係職員10人のうち、半数の5人が村木さんが関与したことを認める調書に署名したことと重なった。無実の人がなぜ自白調書を取られるのか、この本を読むとよく分かる。上村勉元係長の「被疑者ノート」は必見だ。


特捜部を慢心、腐敗させた責任は裁判所とマスメディアにもある。検察とマスメディアの共同幻想によって「特捜神話」が生まれた。本来、監視する対象の組織を祭り上げ続けてしまった責任を痛感した。


ゲスト / Guest

  • 村木厚子 / Atsuko Muraki

    日本 / Japan

    厚生労働事務次官 / Vice Minister of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:著者と語る『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』 

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