2013年03月11日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」内部被曝問題

会見メモ

2012年1月に発足した、「市民と科学者の内部被爆問題研究会」の沢田昭二理事長(名大名誉教授)、矢ヶ﨑克馬副理事長(琉球大名誉教授)、生井兵治常任理事(元筑波大教授)、松崎道幸・北海道深川市立病院内科部長が、福島原発事故での内部被爆問題の現状を踏まえ、会見した。沢田理事長は、福島の小児甲状腺がんの発生率は、すでにチェルノブイリかそれ以上の可能性があり、これ以上放射線被爆をさせないために、速やかに移住・疎開対策を進めるべきだと、うながした。

福島の土壌汚染面積はチェルノブイリ事故とほぼ同じ範囲だが、人口密度が高い分、甲状腺がんのリスクが増す。国は、除染で取り除いた土壌の最終処分場をどこに置くかを決めなければならない。科学的なデータを基に、住めない、帰れない地域が出てくることを国民に説明する必要がある、とも。

司会 泉宏 日本記者クラブ企画委員

使用したスライド(説明順)

沢田昭二氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2013/03/145408713d6869ab7a974ac965c5d262.pdf

松崎道幸氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2013/03/363b30958a2637266bd11d5060957151.pdf

矢ヶ﨑克馬氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2013/03/0ad5dcce993b1baedd45f226419c53a7.pdf

矢ヶ﨑克馬氏 資料 追加修正版(3/25 UP)
http://www.jnpc.or.jp/files/2013/03/b2b8fc9c18fd37eaa900753238dc77c1.pdf

生井兵治氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2013/03/a6f3db7a6f98404501b11a01cae5f8c2.pdf

「市民と科学者の内部被爆問題研究会」ウェブサイト

http://www.acsir.org/


会見リポート

福島の小児甲状腺がん発生率 チェルノブイリかそれ以上

三島 勇 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

「市民と科学者の内部被曝問題研究会」は2012年1月に設立され、内部被曝に関する講演会、研究会を開催するとともに、福島県内で放射性物質による汚染度を測定するなど幅広い活動を続けている。

放射線による被曝には、体の外の放射線源から受ける「外部被曝」と放射性物質を含むチリなどを呼吸で吸い込んだり、放射能汚染された植物を食べたりして体内に取り込んでしまい、体の内から放射線の影響を受ける「内部被曝」がある。この内部被曝は、放射性物質が体内に残存すると、放射線を出し続けて細胞を照射するため、影響が後々まで尾を引くことになる。

事故から2年目となった3月11日の記者会見では、沢田理事長ら4人が、「放射性物質に汚染された地域の住民の内部被曝は、軽視・無視されている」と政府、自治体の無為無策を告発した。

放射線量が積算で100・シーベルトを下回った場合、発がんにどの程度影響を及ぼすかについては、科学的に信頼できるデータは存在しないとされている。しかし、松崎道幸・北海道深川市立病院医師は、最近10年ほどの研究成果によって低線量でも発がんリスクが有意に増加していることがわかってきたと説明。一例として、10・シーベルトで発がん確率が3%増加するとした、原発労働者の疫学調査を挙げた。

そのうえで、福島の土壌汚染度は、甲状腺検診地域として選ばれたチェルノブイリ周辺と同じであると指摘し、「福島の小児甲状腺がんの発生率はすでにチェルノブイリと同じかそれ以上である恐れがあり、(子どもたちの)速やかな移住・疎開の必要がある」と訴えた。

こうした指摘に政府、自治体はどう応えるのだろう。まずは正確な科学的データによる冷静な論議を期待したい。


ゲスト / Guest

  • 「市民と科学者の内部被曝問題研究会」沢田昭二・理事長(名古屋大学名誉教授)、矢ヶ﨑克馬・副理事長(琉球大学名誉教授)、生井兵治・常任理事(筑波大学名誉教授)、同研究会会員の松崎道幸・北海道深川市立病院医師

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

ページのTOPへ