会見リポート
2012年09月06日
16:00 〜 17:30
宴会場(9階)
研究会 「デモと民主主義」五野井郁夫・高千穂大学准教授(政治学・国際関係論専攻)
会見メモ
日本記者クラブ主催の研究会「デモと民主主義」で、五野井郁夫・高千穂大学准教授が、日本の反原発デモの広がりの背景や現状などについて話し、記者の質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 瀬口晴義(東京新聞)
五野井郁夫さんのTwitter
著書 『「デモ」とは何か変貌する直接民主主義』(NHKブックスのページ)
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00911902012会見リポート
カワイイ・ダイレクト・アクション
手塚さや香 (毎日新聞学芸部)
米ニューヨークの「オキュパイ・ウォールストリート」や福島第一原発事故後のデモ・抗議行動に参加してきた五野井氏は講演の冒頭、丸山真男を引きながら「『院内』と『院外』のずれが拡大している」と現在の政治状況を分析した。その上で「議会政治だけを追っていたのでは民意はとらえられない」と問題提起した。政治家だけでなく、報道にかかわる私たちにとっても重い指摘だ。
脱原発を求める官邸前抗議行動に象徴される現在のデモや抗議行動について「祝祭性を帯びた非暴力の直接行動」「類縁集団」「脱中心、多中心」といった特徴を解説した。これらの詳細は著書に詳しい。
五野井氏は現在のデモ・抗議行動を「ポスト『新しい社会運動』」と位置づけ、「カワイイ・ダイレクト・アクション」と命名した。例えば、手作り感あふれるプラカードや子ども連れのためのエリアの設定、「デモ割」(デモ参加者むけの割引)など、いずれも「ゆるい」感じを醸し出している。「デモも草食化か」と憤る向きもあるかもしれないが、誰もが参加できる運動のための「着実なリアリズム」なのだ。
五野井氏は「直接民主主義はポピュリズムへのカウンター(対抗手段)になり得るのではないか」と語った。参加者が政治を自らの問題として考えるようになるからだ。そうあってほしいと私も思うが、楽観的過ぎるという見方もあるだろう。いずれにしろ、デモが各地で頻繁に行われるという現象は、何が正しいか分からない社会において考え続けることを投げ出さず行動する人々が多く存在する、という事実を表しているのではないだろうか。
ゲスト / Guest
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五野井郁夫 / Ikuo Gonoi
高千穂大学准教授(政治学・国際関係論専攻) / Asso. Prof. Takachiho University
研究テーマ:デモと民主主義