2012年02月20日 15:30 〜 17:00 宴会場(9階)
著者と語る 『福島第一原発~真相と展望』 A・ガンダーセン

会見メモ

会見で使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2012/02/709cb5f939f98575ef2ea7df46455afa.pdf


著者と語る 『福島第一原発~真相と展望』(集英社新書)

http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0628-b/index.html


福島第一原発事故の直後、米テレビでメルトダウンが起きていると指摘した原子力技術者、アーニー・ガンダーセンさんが来日し、新著「福島第一原発 真相と展望」(集英社新書)について語り、質問に答えた。

福島第一原発のマークⅠ型原子炉について、設計上の問題を列挙した。さらに①放射能の封じ込めが設計上、最弱②地震・津波の情報無視③東電と規制当局の密接すぎる関係――を指摘し、みな同じことしかいわない「やまびこ効果」で安全神話が広がった、と述べた。住民避難や廃炉、除染の課題をあげ、「日本政府は東電を守ることを最優先し、国民を守ることは第二になっている」と批判した。また、原発建設の3条件として①冷却水の確保②地震③人口密度—をあげ、日本は①は十分だが、②と③からみて、原発は難しい、と述べた。日本の国土面積は世界の0.3%なのに、世界の地震発生数の10%が集中し、世界のどこと比べても30倍の地震が起こる国だ、と説明。「100年に一度、ではなく、1000年に一度のレベルで起こる地震に耐える原発は構造工学上、難しい」と述べ、「ほかの代替エネルギーを探す方が望ましい」と指摘した。使用済み核燃料の処分方法について、「私の学生のころから解決策は5年もあればできるといわれたが、その5年は一度も来なかった」と述べ、ガラス固化法は解決にならない、と説明した。



司会 日本記者クラブ企画委員 井田 由美(日本テレビ)

通訳 長井 鞠子 (サイマル・インターナショナル)


Fairewinds Associates Inc. のホームページ

http://fairewinds.com/

日本記者クラブのページ

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/02/r00023890/

会見リポート

元「米原子ムラ」住人の箴言

瀬口 晴義 (企画委員 東京新聞論説委員)

東京電力の福島第一原発で事故が起きる3週間ほど前、海岸を散歩している夫妻の間でこんな会話があったという。


「これだけ原子炉に問題がある中で、実際に次に事故が起きるのはどこだと思う?」(妻)「どこか場所は分からないが、起きるとしたらマークⅠの原子炉だろう」(夫)


マークⅠとは、福島第一原発で使用されていた米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の原子炉「マークⅠ型BWR」。残念なことに、予言は最悪の形で当たってしまった。


アーニー・ガンダーセン氏は全米で原子炉の設計、建設、運用、廃炉にかかわってきた原子力技術者だ。米エネルギー省の廃炉手引書も書き(共著)、原子力業界で役員を務めた後に、エネルギー・アドバイザーとして、原発に関する調査分析や訴訟、公聴会で意見提供をしている。


経歴を眺めると、米国版「原子力ムラ」の住人である。著書を読み、記者会見でお話を聞くまでは邪推していた。やっぱり日本には原発が必要だ、という結論かな…と。推測はあっさり外れた。氏は1990年に放射性物質をずさんに管理していた勤務先の会社を内部告発し、逆に名誉棄損で訴えられ、電力業界での職を失った筋金入りの闘士だった。


ガンダーセン氏は、スリーマイル島の原発事故の後、疫学調査をしている学者の研究を踏まえ、「今後20年の間で、百万人のがんの発病があるだろう」と言い切り、「地震活動が活発な国で新しい技術が引っ張ってゆくチャンスがめぐってきています」と脱原発を要請した。


ストレステストについては「事故の1週間前に同じテストを課したら福島第一原発は合格したでしょう」とずさんさを指摘。「今の政府は東電を守ることが第一で国民を守ることは第二になっている」とも。政府や東電はこの言葉をどう聞くか。


ゲスト / Guest

  • アーニー・ガンダーセン / Arnie Gundersen

    原子力技術者 / Nuclear engineer

研究テーマ:著者と語る 『福島第一原発~真相と展望』

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