2011年11月22日 11:30 〜 12:30 10階ホール
「チェルノブイリ原発事故の影響による小児がん患者の治療をしたロシア人医師」

会見メモ

ロシアのチェルノブイリ原発事故の子どもへの影響を研究し、治療にあたってきたルミャンツェフ教授が記者会見し「チェルノブイリ事故の小児に対する長期経過の解析」と題して、内部被曝、甲状腺がん、福島原発事故の対策などについて語った。


チェルノブイリ事故による小児甲状腺がんの特徴や発生率、チェルノブイリ・シンドローム、内部被曝などの点について分析した。さらに福島原発事故とチェルノブイリを比較した。放射線由来の疾患の危険性が高いグループとして、胎児期に被曝した子ども、汚染地域から避難した子ども、除染作業員の子どもをあげ、放射線と病気との関係を解明するよう国際的な協力をよびかけた。放射能汚染の危険性を心配する人々に向けて、国の解決策を待つのではなく予防のプログラムがあると指摘し、汚染された土壌の管理・除染、手洗いや野菜・果物の洗浄、ビタミン摂取など毎日続けるべき方法を列挙した。低レベル放射線の人体への影響はわからず、精神的なストレスを受ける人も多いため、専門家を組織して対策を検討する重要性を強調した。


司会 日本記者クラブ専務理事 中井良則

通訳 稲本智佳子


使用した資料

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/11/42327d7729936868de72836320c4a0be.pdf


会見リポート

放射線の健康被害で日露協力を

飯島 一孝 (毎日新聞出身)

福島第一原発事故から8カ月たつが、放射性物質による健康被害がはっきりせず、国民のイライラが続いている。とくに子どもを持つ親の不安が大きいが、それに応えてくれる最適任者が、ロシアのルミャンツェフ医師である。日本の国立小児がんセンター長にあたり、チェルノブイリ原発事故当時から治療に従事。約10万人の被ばく小児のデータを蓄積し、6000人以上を治療してきた。


「チェルノブイリ事故が起きた時、最初に応援に来てくれたのは日本の医師たちで、3年間一緒に活動した。今回は25年間積み重ねてきた経験を日本側に知らせに来ました」


そう語る医師は1986年からの子どもの甲状腺がん発生率を汚染度別、時期別に算出した表をはじめ、詳細なデータをスクリーンに映し出した。その上で、これまでの研究で分かったこととして①小児甲状腺がんは被ばく後、4、5年後に発症②甲状腺がんの発生しやすい被ばく年齢は3歳以下と15歳から18歳がピーク、などを挙げた。小児甲状腺がんが多発した理由については「もともとヨウ素不足の地域で、事故後、ヨウ素を吸収しようとして放射性ヨウ素を吸収しすぎた。日本では海草類を多く食べるので、甲状腺がんがそれほど深刻にならないかもしれない」と語った。


日本の現状にも触れ、「今一番の問題は、放射性物質の危険性について誰も正しい情報を与えてくれないことだ」とし、予防策として①衣服をきちんと洗濯し、手洗いを励行する②野菜、果物はきちんと洗う③ビタミンやミネラルを毎日摂取する、などを挙げた。さらに、放射線量の計測や食品・飲料水の汚染度調査を継続して行う必要性を強調。「私たちの経験を日本側に戻すことにより、低放射線量の問題も分かってくると思う」と述べ、今後も日露間で協力し合うよう提言した。


ゲスト / Guest

  • アレクサンドル・ルミャンツェフ / Alexander G Rumyantsev

    ロシア小児血液腫瘍免疫研究センター長 / M.D. Ph.D. Director of Center of Pediatric Hematology, Oncology and Immunology

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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