会見リポート
2011年11月21日
12:00 〜 14:00
10階ホール
緒方貞子 JICA理事長 昼食会
会見メモ
会見リポート
格差なき大コミュニケーション時代に
脇阪 紀行 (朝日新聞論説委員)
10月にJICA理事長の続投が決まった。いつものごとく、対外援助の意義を熱っぽく語った。
民主化の進展が見られるミャンマー(ビルマ)。「軍事政権が少し自信を持ち、開放へ向かい始めたのだろう。東南アジア諸国連合(ASEAN)の魅力が増しつつある」
独立を果たした南スーダンについては「ジュバの河川港を造り、平和構築の取り組みを続けてきた」とJICAの活動の成果をあげた。
ただ、緒方さんが連携の成果が出た事業として一番にあげたのは、エジプトでの科学技術大学づくりだった。日本の工学系大学の協力を得て、若い人材育成に取り組む。
エジプトなど、「アラブの春」の舞台となった国々の行方には不透明感が残るが、緒方さんは、情報化が進むなかで、人々は、経済発展による格差の拡大により一層敏感になってきている、と指摘。そんな「大コミュニケーション時代」にあっては、開発協力でも「格差を生まないための配慮が強く求められている」と強調した。
8年前に理事長に就任した頃は、イラクやアフガニスタンへの日本の復興支援が大きな仕事だった。今や、その両国から米軍が撤退しつつあり、農業や首都圏整備などの復興支援でJICAへの期待が強まる。
政治学を学んでいた若き日、緒方さんは満州事変をテーマに社会不安の中での軍の台頭を追い、博士論文を書き、本にまとめた。絶版となっていた本が最近、岩波現代文庫で再び世に出た。「多くの人を訪ね、中国を歩き回った。若かったわね」
はきはきした口調のどこからも、失礼ながら84歳というお年は感じられない。会場からは「若さを保つこつは」「継続こそ力なり。理事長をずっと続けてください」といった声が上がったのは当然だった。
ゲスト / Guest
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緒方貞子 / Sadako OGATA
JICA理事長 / President, JICA