会見リポート
2011年05月12日
14:00 〜 15:30
10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 島崎邦彦 地震予知連絡会会長
会見メモ
地震予知連絡会会長の島崎邦彦東京大学名誉教授が企画「3.11大震災」で「震災後の地震発生予測」と題して話し、質問に答えた。
≪「1943年から48年にかけて日本で1000人以上が亡くなる震災が5回起きた。地震はかため打ちすることがある。東日本大震災で始まり、5年~10年間で誘発した震災になる可能性が十分、考えられる」≫
島崎さんは東日本大震災の余震について、本震がM9なら同じ震源域で起こる余震はM8以下であり、茨城沖で起きたM7.7が最大の余震かもしれない、と説明した。また、海のプレートが陸のプレートの下に「するする入る」のか「がっちりくっついている」のかの見立てを誤り、今回の大震災を予測できなかった、と述べた。予想される東海、東南海、南海の地震についても、研究の現状を説明した。さらに、江戸時代の1854年、1855年に起きた安政東海、安政南海、江戸の3つの地震や、1943年から48年にかけて起きた鳥取、東南海、三河、南海、福井の5つの地震をとりあげ、震災が次々の起こる「連発震災」への警戒を訴えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)
地震予知連のホームページ
http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/
国土地理院のホームページ
会見リポート
震災連発期の再来を懸念
芝田 裕一 (読売新聞調査研究本部研究員)
「これほどの被害を防ぐ手段はなかったのか。そう思うと悔しい」
東日本大震災2カ月後に行われた島崎氏の講演は後悔の言葉で始まった。大きな後悔が二つあるという。
一つは、福島から茨城にかけての沿岸部にも三陸のような津波対策が必要だと防災関係者を納得させられなかったこと。島崎氏が部会長を務める文部科学省・地震調査委員会の長期評価部会は、2002年の夏、東日本の太平洋側ではどこでも津波を伴う地震が起こり得ると警告したが、国も自治体も動かなかった。
もう一つは、東北の連動型地震に関する報告書を公表できなかったことだ。869年に起きた貞観地震の研究が進んだ結果、三陸沖から宮城沖までの震源域が連動して大地震が発生し、従来の想定より内陸深くまで津波が襲う可能性が浮上した。この予測を盛り込んだ報告書を今年2、3月に部会で吟味する予定だったが、都合で4月に延期してしまった。震災前に公表していたら、犠牲者を減らせたかもしれない。
「次は後悔したくない」と、今後起こる地震について語り始めた島崎氏は、淡々とした口調で、恐ろしい予測を次々と明らかにしていった。
首都直下地震。「首都圏で地震が起きやすい状況になっている。大地震も起こりうる」。そして東海、東南海、南海地震。「次は1707年の宝永地震のように連動して非常に大きい地震が起きるというのが(地震学者の)一般的な見方だ」
今回の震源域の外側から「アウターライズ」の揺れと津波が被災地を追い討ちする可能性もあるという。
1950年以降、95年に阪神大震災が起きるまで国内で死者が1000人を超える震災はなかった。だが、歴史を振り返れば、終戦前後や幕末など毎年のように大震災が起きた時期もある。島崎氏はそんな「震災連発期」の再来を心配していた。
ゲスト / Guest
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島崎邦彦 / Dr. Kunihiko SHIMAZAKI
地震予知連絡会会長 / Chair, The Coordinating Committee for Earthquake Prediction (CCEP)
研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」