2005年07月29日 00:00 〜 00:00
北尾吉孝・SBIホールディングス代表取締役執行役員CEO

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会見リポート

資本市場の用心棒  

徳永 卓三 (日本経済新聞出身)

ソフトバンクのM&A(企業の合併・買収)戦略を資金調達面で支えてきた北尾氏はベンチャー業界では知る人ぞ知る存在だったが、一般世間にはなじみの薄い人物だった。しかし、ライブドアによるニッポン放送買収に対するホワイトナイト(敵対的TOBの防衛者)としてさっそうと登場、一躍、時の人となった。

ニッポン放送が保有するフジテレビジョン株(22・5%)を投資ファンドに5年間貸し出すという奇策を提案、ライブドア陣営のフジテレビ支配という野望を打ち砕いた。北尾氏の登場でライブドアはフジ支配を断念、フジテレビは命拾いをした。

北尾氏がホワイトナイトとして登場した背景には、米国流の敵対的TOBは資本市場の健全な発展にとって好ましくない経済行為であるという強い信念がある。北尾氏は野村證券時代に米国流経営を勉強、ソフトバンクの常務に就任した当初は米国流経営を実践し、同社の拡大路線を支えてきた。しかし、その過程で株主至上主義の米国流経営に疑問をもち、石田梅岩、渋沢栄一、松下幸之助らに連なる日本的経営の源流を取り入れた新しい日本的経営の確立を模索し始めているように見える。

一方で北尾氏はソフトバンクの取締役を辞任、総合金融グループをめざすSBIホールディングスを率い、ソフトバンクからの独立を社内外に宣言した。普通、ベンチャー企業における取締役の独立は内紛に発展することが多いのだが、今のところ北尾氏の場合、そういう状態になっていない。あらためて孫正義氏の度量の大きさを痛感する。北尾氏には「SBIグループの時価総額を10兆円にする」という目標を達成するとともに、日本の資本市場を守る用心棒になってもらいたい。それが孫氏の度量の大きさに報いることにもなる。

ゲスト / Guest

  • 北尾吉孝 / Yoshitaka Kitao

    SBIホールディングス代表取締役執行役員CEO / Executive Officer and Representative Director, SBI Holdings

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