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泊まり込み継続中 フォロワー3倍超に(朝日新聞 坂尻顕吾)2011年4月

大地震発生直後の3月11日夕、菅直人首相は「一部の原子力発電所が自動停止したが、外部への放射性物質等の影響は確認されていない」と語っていた。

 

だが、福島第1原発では高濃度の放射能漏れが現実となり、原子炉の冷却作業は一進一退の状況が続く。東日本大震災による被災の全体像はなおつかめず、原発情勢も収束の見通しが立たない。

 

官房長官会見は、政府方針を表明する場でもある。緊急会見への備えから、震災発生の初日から官邸担当の中堅記者が数人ずつ、1日2~3交代で記者室に張りついている。また、首相動静を追う若手記者は官邸玄関を警戒し、誰が何の目的で官邸を訪ねてきたのか、早朝から深夜まで訪問者に問いかける毎日だ。

 

取材が長期化すれば総勢十数人はいる首相官邸取材チームも疲弊しかねない。震災発生の翌12日夜からは与党や野党など官邸担当以外の担当記者にも応援に入ってもらい、午前1時すぎから翌朝までの泊まり勤務を肩代わりしてもらっている。

 

震災発生当初、携帯電話はかかりにくいけれども携帯メールやツイッターなどはわりと容易に利用できた状況が幸いしたのか、1月末から始めた朝日新聞の「官邸ツイッター」(https://twitter.com/asahi_kantei)も注目された。

 

こちらも震災情報を意識し、官房長官の会見ポイントやアサヒ・コムにアップされた会見全文リンクのほか、紙面には載せないような政権内の細かな動きを積極的に発信した。それが「役立つ」と思われたのか、震災前に6千人だったフォロワー数は3週間後の月末には3倍超の2万人にまで跳ね上がった。

 

ただ、政権内でも賛否が入り交じる首相の「現場主義」にはこちらも振り回されている。3月21日に予定された首相の自衛隊ヘリによる被災地視察は、当日朝になって「天候不良」を理由に中止された。

 

前日深夜から総理番の若手を宮城県石巻市の視察地へ車で向かわせたが、ちょうど到着したころに肩すかし。記者には「わざわざ行ってもらったのに申し訳ない」と伝え、その日のうちに東京へ引き返してもらった。

 

(さかじり・けんご 1993年入社 現・官邸クラブキャップ)

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