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用意を周到に 自主避難地区へも(TBSテレビ 桶田敦)2011年4月

”原発震災”の取材とスタッフの安全管理のため、3月13日から前線本部のある系列局テレビユー福島(TUF)にきている。JNN(TBS系列)は避難指示区域の立ち入り禁止はもとより、自主的な取材規制区域をもうけて、記者の安全管理を行いながら取材を行うと決めた。

 

前線本部となっている本社は福島市にあり、福島第1原発から直線距離で64キロ。十分な距離がある上、途中に標高500~600メートルの阿武隈山地があるため、放射線の直接被曝の影響はないと考えていた。ところが、15日早朝の2号炉の圧力抑制室の爆発後に高い放射線が原発周辺から検出され、同日夕方からの雨で福島でも25マイクロシーベルト/時の環境放射能が観測された。

 

枝野官房長官の常套句になっている「直ちに健康に影響を与えるレベルではない」ものの、この放射能レベルの環境下に長時間身体をさらしたり、塵となった放射性物質を万が一、体内に取り込んだりした場合、被曝することが現実のものとなった。TUFには線量計がなかったためTBSから線量計とサーベイメーターを持ち込み、個人あるいは取材チームレベルで被曝線量の管理を行っている。また、取材から帰社した時にはサーベイメーターで衣服や靴などに放射性物質が付着していないかチェックを行っている。

 

非現場スタッフには放射線被曝に対する不安が広がった。そこで「放射線とは?」といった説明会も行った。「今の状況では外にいるときにはマスクをするなどきちんと対処すればなんの不安もない」と伝え業務に励んでもらっている。

 

事故から3週間がたって、福島県内の放射線レベルも一部地域を除いて落ち着いてきていることもあり、当日の風向きや避難経路の確保を図りながら、20~30キロ圏内のいわゆる”自主避難”地区の住民の苦悩や置き去りにされた地域を支えるボランティアの動きを伝える取材も、限定的にではあるが始めた。

 

原発はいまだ深刻な状況にある。ぎりぎりの判断をしながら、発表ものだけでなく取り残された住民の現状を伝える重要性は一層高まっている。

 

(おけた・あつし 1992年入社 現・報道局次長 科学・災害担当)

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