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3・11から3年:風化させない決意2014(2014年3月) の記事一覧に戻る

帰還か移住か 14万人が背負う現実 (福島民報社 紺野正人)2014年3月

人の記憶は薄らいでいくものだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から「3年もたったのか」と感じる人は少なくないだろう。

 

震災と原発事故に伴う福島県の避難者数はピーク時に16万人を超えていた。昨年12月12日現在の県のまとめでは13万9996人で、14万人を切った。約6万2800人を数えた県外避難者も昨年11月14日現在、約4万9500人と、5万人を下回った。時間の経過に伴う空間放射線量の低減に加え、除染の進展などが安心感を与え、帰還につながっているとみられる。

 

しかし、いまなお多くの住民が古里を離れ、仮設住宅などでの避難生活を余儀なくされていることに変わりはない。国直轄で進められている避難区域の除染は大幅に遅れており、除染で出た土壌を搬入する中間貯蔵施設は建設場所すら決まっていない。災害公営住宅の建設が本格的に始まるのもこれからだ。復興の時間軸で捉えれば、「まだ3年」といわざるを得ない。

 

避難区域が設定されている県内11市町村のうち、田村市都路では、4月を軸に避難指示解除準備区域の解除が検討されている。楢葉町も今春に帰町時期を判断する予定で、旧警戒区域での住民帰還に向けた動きが本格化する。住民は「帰還か」「移住か」の難しい選択を迫られる。帰還後の生活再建や地域コミュニティーの回復なども大きな課題だ。これまで以上に県民に寄り添った報道が求められる。

 

福島民報では、避難先での暮らしはどうか、困ったことはないか、生活再建する上で何が必要かなどを取材し、「避難者の声」として、ほぼ毎日、掲載している。こうした地道な報道が、住民本位の復興に役立てばと考えている。今後もさまざまな声に耳を傾け、伝えていきたい。

 

(こんの・まさと 報道部副部長)

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