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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

北海道の「深い穴」(関口 裕士)2013年1月

 

10万年もの長い時間、隠し続けられるだろうか。10万年も隠し続けないといけないものを、なぜ生み出してしまったのだろうか。緩やかなトンネルが続く入り口に立っただけで、オンカロが問いかけてくるような気がした。


昨年4月に連載を始めた原子力関連企画の第1部で「核のごみ」を取り上げた。原子力政策の先送り体質や行き詰まりが、そこに凝縮されていると思ったからだ。連載に先立ち、世界で初めて核のごみを埋める「深い穴」を掘り始めたフィンランドのルポを書こうと昨年の今ごろ、オンカロの取材準備を進めていた。だがアポ入れが難航し断念した。取材団の一員として訪れたオンカロは1年越しの取材対象だった。


オンカロと同じような深い穴は北海道にもある。札幌からひたすら北へ、特急で4時間かかる幌延町。日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターは現在、地下350メートルまで掘っている。東京タワーがすっぽり入る深さだ。地下へは6人乗りのゴンドラで降りる。オンカロと違い垂直に直径6・5メートルの穴が続き、その先は真っ暗で見えない。これまでに3回潜ったが、いつも恐怖感を覚えた。


深地層研は、核のごみを地中深く埋めるための技術を開発し、地質や地下水の流れなどを研究する施設。オンカロと違い、あくまで研究施設であって、核のごみは持ち込まない。後10年ほど研究すれば埋め戻す計画だ。


しかし、ここが核のごみ捨て場になるのではないかとの疑念は道内に根強い。幌延町は1980年代以降、最初は原発を、後に核のごみの貯蔵施設を誘致した。それが道内全体を巻き込んだ反対運動で頓挫し、妥協の産物としてできたのが「核抜き」にされた深地層研だった。せっかく掘った深い穴、埋め戻すのはもったいないと考える人たちがいる。過疎の町で誘致の火種はくすぶり続ける。今も町商工会などが核のごみの最終処分場の誘致を半ば公言している。


深地層研はオンカロより深い地下500メートルまで掘り進める計画だ。今後も取材対象として目が離せない。同じように一面雪に覆われたオンカロで、あらためて北海道の深い穴のことを考えた。

 

(北海道新聞社報道センター記者)

 
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