ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

取材テープ60本×21本 考えるきっかけ届けたい(田実 万紗子)2013年1月


「こんなのあるから、行ってみたら!」ある日、上司から、案内文と共に声をかけられた。目をやると、担当記者にとって、“釘付け”のプログラム。「行ってきます」と即答した。

 

昨夏、福島の原発事故後、国内で初めて再稼働に至った大飯原発を取材した。その後も、関西電力は、「安全が確認された原発は速やかに動かしたい」と主張する。だが、核ゴミ処分の問題は進展がない。原発の是非とは別にして、直視しなければいけない現実がある。何かヒントが得られるだろうか?極寒の北欧へ向かった。

 

ロシアからのエネルギー依存を減らすべく、強固な地盤に処分場を作り、原発と共に現実的な歩みを進めるフィンランド。核廃棄物は輸出入せず、自国処理を法に定めている事を、行く先々で強調された。取材を進める中で、「ん?どこかで聞いた話だな・・・」と感じた。

 

数年前、ある家族に密着し、日本とドイツの臓器移植問題を取材した経験がある。「必要な移植は、自国でまかなうべき」、そんな提言がWHOでなされた頃だった。国内で進まない臓器提供。募金活動を経て、海外移植にすがる患者家族。自国の問題として議論するべき・・・日本の姿勢を、国際社会から批判された格好だった。全く別の問題でありながら、私の頭の中では、当時の議論と、核ゴミの現状がシンクロしたのだった。フィンランドの覚悟と比べ、決められない日本の先送り体質。今に始まったことではないが、情けない。

 

「電気料金UPはゴメンやけど、おばちゃん難しいこと分からヘンねん・・」。いつも関西で取材をしていると、原発の問題は、大阪の人にとって、遠い国の話であるかのように無関心で危機感が薄い、という印象を持つ。だが、道頓堀のギラギラした電飾を支えるのは、紛れもなく福井県にある原発なのだ。自戒をこめて、伝えるべき私たちメディアの使命は、本当に大きいと痛感する。

 

北欧で、原発の国と、自然エネルギーの国を見た。60分×21本にも及ぶ素材の中から、どうやって、考えてもらう“きっかけ”を届けられるのか。311後、いまこそ、日本が決断するときではないか?宿題が続いている。

 

(朝日放送報道局記者)

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