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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

揺れる国・揺れない国-「地質」は語る(竹次 稔)2013年1月

 

政府の地震調査研究推進本が2月1日、九州で今後30年以内にマグニチュード6・8以上の大規模な地震が起きる確率を算出した「活断層の長期評価」を公表した。

九州電力関連では、鹿児島県の川内原発(薩摩川内市)南側にある市来断層について、九電が19キロとしていた断層の長さを25キロとより長くとらえた方がいいという評価を出した。原発直下の活断層問題ほどではないが、その影響を踏まえた原発の耐震評価が九電にも迫られることになった。

フィンランドから帰国し、日本と大きな違いを感じるのは「原発と地質」についてだ。フィンランド人の多くが、地震を体感したことがないという。日本は活断層の影響が運命づけられていると言え、最新の知見を原発に常に反映せざるを得ない。それは原発を推進すべきかどうか、関連施設を受け入れるべきかどうかを国民が決める決定的な条件に思えた。地下からの揺れ、海からの津波、最近は空からの航空機の墜落などにも耐えられる構造が求められている。それが今、国内の電力会社を苦しめている。

北欧に向かう前、フィンランドの最終処分試験場「オンカロ」を描いた映画「100、000年後の安全」を見た。気になったのは、将来に対する懸念として人間が地下に入って、掘り返すリスクを重点的に描いていた点だ。だがおそらく、日本を舞台にしたらそうはならなかったはずだ。長期的に地盤がずれて、核のごみが地上に近づいてこないのか、核のごみを覆うバリアーが壊れて地下水に放射性物質が入り込まないのか-。ミケル・マッセン監督は、地質変化の影響をより詳細に盛り込んだことだろう。

一方で、日本でも「安全」とされる原発地域はある。一つが佐賀県の日本海側の玄海原発(玄海町)。九電によると、原発敷地内を調べると、すぐに200万年前の地層が出てくるという。原子力規制委員会が示した新たな安全基準は拡大され「40万年前以降に動いた断層を考慮する」というものだが、それよりも遥かに昔で安定しているという。玄海町のような場所が、最終処分場や中間貯蔵施設の新候補地に浮上するのではないか。その懸念は帰国後、強まる一方だ。

 

(西日本新聞社報道センター)

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