ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

最前線記者たちから得た刺激(加藤 太啓)2013年1月

 

「フィンランドに行ってもらうことになったから。うらやましいなあ」と上司から突然告げられたのが昨年11月上旬。後半の言葉には「観光旅行じゃあるまいし。真冬に行っても寒いだけでしょ」と心の中で少々毒づきながらも、にわかに準備を始めた。

ところが、その矢先の11月14日、野田佳彦首相(当時)が衆院解散の意向を表明。急きょ始まった選挙戦取材は2カ月後に控える白銀の世界を意識の片隅に押しやった。

ようやく落ち着き始めた年明けから準備を再開。クラブ事務局から送ってもらった資料にも目を通したが、普段の取材とはかけ離れた内容に頭の中がうまく整理されない。

2010年度から県政担当として地元の四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)を取材し、東京電力福島第1原発事故以降は原発施設の安全性や事故時の防災対策に重点を置いていた。使用済み燃料を再処理したプルサーマルを伊方3号機が全国2番目の10年3月から始めたこともあり、核燃料サイクルは取材テーマの一つではあったが、こと最終処分にまで話が及ぶと、どこか現実感がなかった。

ヘルシンキに向かう機内にも資料一式を持ち込むというドタバタぶりだったが、やはり百聞は一見にしかず。それまで一向に実像を結べなかった「オンカロ」に足を踏み入れた途端、最終処分の必要性とともにその困難さを強く感じた。

何より今回の収穫は取材団メンバーの高い問題意識に触れ得たこと。さまざまな現場の最前線で取材にあたっている各氏から発せられる質問は刺激的で示唆に富むものばかりだった。

これほど多くの記者の中で取材をする機会は地元であまりない。ずっと同じ対象を追いかけ、ともすれば視野が狭くなりがちな日々の取材を見直す貴重な経験になった。今なら出発前に上司から言われた「うらやましいなあ」の意味を理解し、素直にうなずける気がする。

 

(愛媛新聞社政治経済部)

 

(「H2 Interaction」の取材 2013.1.19 デンマーク・ロラン島内の小学校で 筆者撮影)

 


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