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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

”隣国”フィンランドは情報共有国(菅原 和彦)2013年1月

 

フィンランドは遠い国だ。そう思っていた。しかし、現地で「フィンランドと日本は、ロシアと隣国であることが共通している」と聞き、「そうだったか」と認識した。

 

あまり意識せずにいたが、地図であらためて確認すると、確かに大国ロシアを挟んだ位置にフィンランドと日本はある。そして両国は共に、旧ソ連時代を含めてロシアと緊迫した関係を持ってきた。

 

もちろん、陸続きのフィンランドの方がはるかに影響が大きかったに違いない。

 

今回の訪問先の一つに、首都ヘルシンキのウスペンスキー大聖堂があった。1868年、日本が明治維新となった時に建立された美しいロシア正教の教会。視察の目的はその地下だ。

 

岩盤を掘った地下室。そこではIT企業と地元エネルギー公社が、コンピューターの排熱を利用した冷暖房システムを構築している。

 

何とそこは、第2次大戦前、ソ連軍の攻撃に備えた防空壕だという。その後は議会の核シェルターに位置づけられたと聞いた。

 

取材団を案内してくれた人は、さらに驚くべきことを言う。「かつて、大きな建物や多くの人が入れる建物の地下には、核シェルターを設けなければならなかった。だからマンションの地下にはシェルターがある」。それほどまでに核の脅威は現実的だったのか―。

 

フィンランドが今でも原発を推進するのは、エネルギー確保面で「脱ロシア」を目指すことにも要因がある。現在、天然ガス、原油、石炭と、ロシアからの輸入量は多い。エネルギー安全保障上、依存度を下げていく必要がある。原子力の両面を見る思いがする。

 

将来も原子力は主力の一翼を担い続けることになるようだ。技術について行政や業界は自信を見せる。使用済み核燃料の処分先も「オンカロ」一帯に決定している。

 

一方で日本は、ロシアからの天然ガス輸入に向けた環境整備を開始している。パイプライン敷設を求める声もある。ここで問題になるのは、ロシアに対する信頼性だ。

 

ロシアをどう見て、どう関わるのか。その意味でも、日本にとってフィンランドは大切な「情報共有国」なのかもしれない。

 

(岩手日報社論説委員)


かつて地下が「防空壕」や「核シェルター」だ ったウスペンスキー大聖堂

(2013.1.16 フィンランド・ヘルシンキ 筆者撮影)
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