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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

「地方再生術」-北海道の手本に(竹田 暁子)2013年1月

 

私が住む北海道旭川市から車で約3時間のところに「原発のゴミ」の研究施設、幌延深地層研究センターがあり、おととしの5月に取材しました。

 

今回取材したフィンランド「オンカロ」の地盤は強度、年代、種類など日本と比較して「鉄」と「プラスチック」ほどの差。道内在住の地質学専門家は「コンクリート」と「砂の塊」と表現していました。また、地下水の少なさを目の当たりにし、日本の地層処分の現実性について深く考えさせられる視察でした。

 

説明者は処分企業の地質学者ですから「安全」を強調するのは当たり前として、話半分で聞いてもやはり、圧倒的な「差」…。

 

原発とイコールで議論されている「核のゴミ」に対する責任についても、日本のように先送りしない、現実的な選択ができる政府とは、一体何がそうさせているのかー住民が処分場を受け入れた理由とは-?本音は?

 

短期の取材ではつかみきれませんでしたが、政府、行政、専門家に対する信頼度、フィンランドの庶民感覚、教育制度をもっと知りたいと感じた取材でした。

 

原発建設中の国「フィンランド」と原発ゼロの国「デンマーク」。両者を視察することとなった今回の取材では国民性の違いも興味深かったです。控えめでちょっとシャイに感じるフィンランド人。貪欲に自己アピールするデンマーク人。デンマークの現地ガイドの話ではデンマーク人はラテン系の気質があるとか…。

 

現地の案内役、ロラン島市議の話は地方再生へのヒントが凝縮されており、帰りのバスで聞いた話が印象的でした。

 

デンマーク取材では再生エネルギーを入口に、「地方再生術」が北海道のお手本になると感じ、ゴミ処理場の廃棄物から割り出した市民の意識変化、経済動向に左右されない「研究機関」誘致へと方向転換したロラン島の分析力。デンマークの事例をそのまま日本に当てはめることはできませんが、結局はキーマンとなる「人」と「情熱」と「智恵」があれば、何か新しい挑戦ができるーそして、教育なのかもしれない…。と、北欧初体験の感想です。

 

(北海道文化放送報道部旭川支社)

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