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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

北欧の島で南の島を思う(下栗 淳也)2013年1月

 

奄美大島は鹿児島県本土から南西へ約380㌔、亜熱帯の原生林に覆われた山勝ちな島である。


島の南西部に深く切れ込んだ湾沿いに点在する十数集落が宇検村。人口2千人ほどで、奄美の奥座敷といった趣がある。


この村が6年前、「核のごみ」の処分場をめぐって揺れた。誘致話が表ざたになって1週間もせずに白紙撤回となったが、推進した村長の言葉が耳に残っている。


「財政を立て直すには大きな企業か国策関連の誘致が必要と考えた。日本のどこかに必要な施設だ。それに交付金が魅力だった」


軽率さは否めないが、過疎の村を預かる村長の苦悩に同情した。同時に、厄介ものを遠くへ遠くへ押しやるうち、遂に離島に回ってきたかとやるせなくなった。


さて、亜熱帯の奄美とは正反対の北欧の島オルキルオトである。


雪をまとったイトスギや白樺の景色は予想通りだが、鮮やかなオレンジ色の原発の建物群には面食らった。建設中の3号機と併せ「生きている原発」の得体の知れないパワーを感じた。


お目当てのオンカロに移る。トンネルに入った瞬間に眼鏡を曇らせた熱気に、またも「生きている」感じがした。「ごみ」を収めた後は埋め戻して痕跡を残さないという説明に妙に説得力があった。


それにしても、よくもこれだけの原子力関連施設を一つの島に集めたものである。住民は納得したのか。日本をたつ前から疑問に思っていた。


地元のエウラヨキ町長は「原発で恩恵を受けている。原発によって出るごみに対する責任を果たさなければならない」と言った。


もっともそれは、十数億年も安定した岩盤に守られ、地震を心配する必要のない国土だから言えることに違いない。住民が原発の安全性、もしくは危険性にあまり関心を持っていないのも、国土に対する安心感があるのだろう。


地震国・日本とは事情が違う。核のごみは、今の技術では日本国内で地層処分できるような代物でないという思いを強くした。


だから、奄美の村長が「日本のどこかに必要な施設」と気にするような施設ではないことは明らかである。

 

(南日本新聞論説委員)

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