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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

フィンランド 忘れられるための施設 オンカロ(副団長:井田 徹治)2013年1月

 

フィンランド取材のハイライトは、同国南西部のオルキルオト原発と、「オンカロ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物の最終処分場の見学だった。

 

オンカロでは、代表取材チームの一員として地下400メートルを超える場所にある埋設場のデモンストレーション施設を見る機会に恵まれた。

 

直径約2メートル、深さ約8メートルの立て坑の中に、使用済み核燃料が詰まった金属製のキャニスターを入れる。壁面などから漏れ出す地下水は少なく、施設は拍子抜けするほど単純だった。この地域の岩盤が19億年前に形成され、厚さ60キロにもなるものだという点が、大きなアドバンテージになっており、地震や火山活動、地下水の流動が活発な日本とは大きな違いがある。

 

「地上の施設もすべて撤去して自然の状態にする。地上にはなんのマークも残さないので、誰もここに何かがあるとは気付かないだろう。忘れられるための施設を造るのだが、それでも一向に構わないと思う」というのが施設を案内してくれた地質学者の言葉だった。

 

「安全システムの問題」(TVO社)などによって完工が遅れるオルキルオト3号機の進捗率は約80%。「飛行機が衝突しても安全性が保たれる構造になっている」(同)という3号機は、完成すればフランスに建設中の同型の原発と並んで、世界最大の原発となる。

 

一見、順調そうにみえるフィンランドの原子力開発だが、東京電力福島第一原発事故以降、さまざまな変化が見られる。事故後、初めて建設計画が具体化したとして注目されたフェンノボイマ社のピュハヨキ原発は、同社に34%を出資していたドイツのイーオン社の撤退で計画の中止まで取りざたされるようになっているし、オルキルオト3号機の建設コストも膨れ上がっている。

 

バパーボリ雇用経済相も「事故後、安全性強化のために建設コストは高まる。それが投資家がこれからも原発に投資を続けるかの判断に影響を与えるだろう」と話していた。原発建設への日本企業の動向を含めて、今後も目が離せない。

 

(共同通信社編集委員)

 

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