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第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

日米韓の協調を軸に(上村 武志)2009年9月

 韓国・ソウルに到着した翌日の2月13日午後、国会内に、韓国の最大野党ハンナラ党の代表である朴槿恵氏(54)を訪ねた。今回、我々は、4人の次期大統領有力候補にあったが、その最初の会見だった。
  比較的小柄な身を薄いピンクのスーツで包み、気品のある、落ち着いた雰囲気が印象的だった。我々の質問にも、一つ一つ考えながら丁寧に答えてくれた。結局、会見は約一時間に及んだ。
  我々が質問する前に、朴氏から語ったのは、日韓関係の現状に対する懸念だった。昨年は国交正常化50年で、「日韓友情年」だったにもかかわらず、「両国関係が厳しくなったのは残念」と前置きし、問題解決のために「政治家の慎重な言動」を求めた。もちろん、靖国参拝問題を念頭に置いての発言だろう。
  我々が最初に尋ねたのは、盧武鉉政権の3年間の評価だった。
 朴氏は、経済、米国との同盟、対北朝鮮外交など、内政、外交の主要課題で、「ほとんど逆になるほど、立場の違いは大きい」と言う。「国民の分裂と葛藤を深めた」と、政権に対する批判は、歯に衣着せぬ厳しいものだった。
  それだけに、ハンナラ党政権実現への意欲は並々ならぬものがあった。「政権交代がハンナラ党の使命だ」「必ず実現する」という言葉には力がこもっていた。
  ただ、自身の大統領選出馬には、「代表として、言動を自粛する必要がある」と明言はしなかった。だが、言葉の端々から、自らの大統領への道を開こうとする強い意志を感じたのは私だけではない、と思えた。
  北朝鮮問題はもちろん、東アジアの将来も、韓国を抜きにして考えることはできない。韓国の対外姿勢についても、朴氏の基本的な考えを率直に聞いた。
  南北関係については、朴氏は、盧武鉉政権の対北朝鮮外交を「失敗と思う」と断じた。北朝鮮を国際社会の責任ある一員とし、その結果として、北朝鮮経済の改善が望ましいが、「盧武鉉政権は一つの力にもなっていない」と言う。
  自由と民主主義、人権向上、南北交流は増進しても強化すべき安全保障……。盧武鉉政権は、南北統一ができたとしても順守すべき原則を守っていない、というのが朴氏の主張だった。
  米韓関係についても、北朝鮮に核廃棄を迫る6か国協議に触れながら、「信頼関係が損なわれている」と、盧武鉉政権下での現状に懸念を示した。
  日韓関係では、「同伴者的な関係が両国の国益になる」と力説した。「歴史問題のためにそうなっていないのは残念」と繰り返したが、対日批判という面はあるとしても、それ以上に、盧武鉉大統領の下で冷えきった日韓関係を何とか打開する道はないか、という気持ちが感じ取れた。
  盧武鉉大統領には、「バランサー」発言のように、日米とは従来より距離を置くかのような不透明な点もある。それに比べ、朴氏の場合は、日米韓3か国の協調を基軸とする姿勢が明確で、一貫していたのがたいへん印象深かった。

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