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第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

全州の喧噪(千野 境子)2009年9月

  これまで何度も韓国を訪れながら全羅北道には縁がなかったので、一番楽しみにしていたのが全州市行き。そして帰国したいまも一番印象に残っている。ビビンバの古里だから? それもあるが、それだけではない。
  あの喧噪。鐘。太鼓。ドラ。歌声。シュプレヒコール。小雨の中、私たち一行のバスが市内の体育館に到着するや、どっと飛び込んで来た大音響にカラフルな色彩。与党・ウリ党の代表選候補者の最終演説会がまさに始まろうとしていた。
  その瞬間、ああ、やっぱり韓国へ来たんだと改めて実感した。いや私のイメージする韓国へ、と言った方がより正確かもしれない。明るく騒がしく、少々ワイルドだが原初的エネルギーを熱く放つ韓国。ほっとし、うれしくもなった。日本と比べ、まだまだ韓国にはお国らしさが地方に色濃く残っている気がする。
  残念ながら演説の中味は後で説明を聞くまではチンプンカンプン、ただ履歴に運動家や投獄経験者の目立つことが韓国のいまの政治状況を雄弁に物語っていたと思う。
  熱く燃える体育館を一歩出ると、外は冷たい雨。衆目の見るところウリ党を取り巻く環境は厳しい。5月の地方選の苦戦は必至だし、盧武鉉大統領の支持も低迷している。
  いきおい国民の目は野党に注がれる。このあたり、日本の野党とはちょっと違うようだ。大統領選の有力候補と目されるハンナラ党の朴槿恵代表、李明博ソウル市長に会見した。国家統治に大きなビジョンを描こうとする前者、経営者感覚の手法で手堅さを見せる後者と対照的な二人だが、どちらにせよこの二人なら、現在の日韓政治の不毛も少しは改善するのではと思えたのは、甘いだろうか。
  もっとも野党にも弱みがある。とくに反朴の固定票も2-3割がたはあるそうで、多数派獲得は野党側も容易ではなさそうだ。
  米大統領選挙が赤組と青組にくっきり色分けされたように、韓国も与野党真っ二つの状態だ。自民党一強状態の日本は、もしかして立派な”独裁政権”なのかナなんて。
  日本の変化はEvolutionary(漸進的)、韓国の変化はRevolutionary(革命的)。似て非なる日韓を実感する旅でもあった。

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