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第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

ポスト盧武鉉に興味倍増(西川 孝純)2009年9月

  ほぼ22年ぶりに韓国を訪れた。この間にオリンピックを経験し、経済発展を成し遂げただけあって、ソウルは大きく変容し、街行く人々にも自信があふれているという印象を強くした。
  今回の訪韓で、盧武鉉大統領の後継候補と目される政治家の面々に会えたのは大きな収穫だった。朴槿恵ハンナラ党代表、李明博ソウル市長、鄭東泳・前統一相ら。いわば韓国版「麻垣康三」というところだろうか。
  ソウル市庁舎に李市長を表敬してのインタビューでは代表質問を仰せ付かった。韓国最大の財閥・現代グループの中核企業である現代建設に入社し、平社員から社長に上りつめた努力家だ。「国家のリーダーは統治するのではなく、企業家としてのマインドが必要」という言葉に、軍人出身者あるいは民主化運動活動家と違う雰囲気が鮮烈に感じられた。
  本人に会う前に、復元工事が完了し清流を取り戻したソウル市内の清渓川沿いを散策した。総工費約424億円を投じ、一日20万台が行き交う幹線道路とその上を走る高速道路を撤去し、市民の憩いの場として生まれ変わった。
  最近、小泉純一郎首相や石原慎太郎東京都知事が日本橋に青空を取り戻そうと改修を言い出している。恐らく清渓川が手本だろうが、困難さを考えるにつけ李市長の手腕に感心する。
  大統領選への対応を尋ねると「市長任期を終えた時点で公式に話したい」と明言は避けたが、「大統領になることではなく、何を(大統領になったら)やるかが大事なことだ」と意欲もにじませた。6月に新市長にバトンタッチすれば出馬宣言が聞かれるはずだ。
  対日関係では「戦後のドイツは、アデナウアー首相の指導力で歴史問題を解決した。日本もこうした努力が必要だった。歴史の清算はパソコンで計算するようなものではない」と語り、戦争責任の明確化など過去を克服できない日本への厳しい指摘が耳に痛かった。
  他の指導者も現在の日韓関係に深い憂慮を示した。最大の理由は小泉首相の靖国神社参拝である。同時に、新しい日本の指導者と真の友好関係を築きたいとの意向も強かった。ポスト小泉への関心、とりわけ安倍晋三官房長官に対する関心が高かった。
  次期首相も靖国を参拝すべきであると主張する「安倍首相」で関係は改善できるのかどうか。日本の後継総裁レースと並行する形の、ポスト盧武鉉の争いに興味が倍増した旅となった。

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