ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

あらたな自省の機会に(濱元 克年)2009年9月

 ポスト盧泰愚を争う与党ウリ党、野党ハンナラ党の有力者らとの会見や大手企業などの視察を通して、韓国社会の現状の一端に触れることができたことを感謝したい。
  最も印象に残ったのは、ウリ党の代表選挙候補者による演説会だった。各候補者とも絶叫調の訴えで終始したが、支持者を小学校のころに父親に連れられて行った衆院選候補者による立会い演説会を思い出した。当時は沖縄の本土復帰直後で「熱い政治の季節」が続いており、演説内容は理解できなくとも、人いきれであふれる小学校体育館の熱気は未だに記憶に残っている。
  最近は、政治家のテレビ出演の増加で、政治が身近に感じられる一方、長時間にわたる論戦を直接聞く機会は極めて乏しい。ワンフレーズでいかに有権者を引き付けるかというだけでは、あまりにも寂しい。
  米軍普天間飛行場の移設を争点に注目された1月の名護市長選挙では、市民運動グループなどが各候補者による討論会開催を申し入れたが、一部陣営が応ぜず、実現できなかった。本紙でも紙上討論や座談会記事などで、有権者の関心を高めるよう努めてきたつもりだが、今回も投票率の低下が続いた。政治や外交、経済に関する関心の有無は、その社会の活力につながっていくように思う。いかに関心を高めていくか、さらに工夫していく必要があると感じた。
  今回の取材では、論説委員の皆さんや地方紙の記者らとともに過ごさせてもらい、各記者の真摯な取材姿勢に触れることができ、多いに刺激になった。
  沖縄では、あるいは本紙では「基地問題に対する全国の理解が足りない」とする論調が多い。地域の課題を全体としてどう受け止めていくのかということが求められていると思う。
  今回の取材を通して、果たして自分が竹島の領有権問題や北朝鮮による拉致事件などにどれくらいの関心を示し、理解してきたのか。あらためて自省する機会にもなった。

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