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第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

精一杯のアピール(影山 日出夫)2009年9月

 「どうぞよろしくお願いします」。予定時間を30分も超えて会見に応じた潘基文外交通商相は、最後に日本語でこう語りかけ、取材団の一人ひとりともう一度握手を交わした。実は、潘氏はこの会見の2時間前、在ソウルの内外記者団を前に国連事務総長選への出馬表明を行っていた。私たちへの「サービス」は、何としても隣国の支持を得たい同氏の、日本に向けた精一杯のアピールでもあったのだ。
  「日本の態度に関心が集まること自体、韓日の不正常な関係を示している」との潘氏の言葉通り、日米韓の枠組みを考えれば、日本が真っ先に支持を表明しても不思議ではない。しかし、日本外務省は「アジアの他の国々の動向も見て、総合的に判断する」として、明確な意思表示を避けている。その背景に、悲願である日本の国連常任理事国入りに対して、歴史問題を理由に、韓国政府が中国と歩調を合わせて反対した経緯があることは明らかだ。
  取材団との会見で、この問題への対応を問われた潘氏は、「日本政府が周辺国と十分な信頼関係を築き、歴史問題に謙虚な姿勢を示すことを望む」という従来からの見解を繰り返した。しかし、はじめは「国連加盟国の広範な合意が必要だ」との一般論でかわそうとし、「韓日関係の打開には(韓国政府としても)引き続き努力したい」と何度も付け加えるなど、極力突き放した印象を与えまいとする計算が感じられた。
  帰国直後の、私が担当する番組「日曜討論」のゲストは、潘氏のカウンターパートである麻生外相であった。麻生氏は「中国と違って、韓国とは少なくとも外相レベルの対話はいつでも出来る関係だ」と語り、韓国との関係は悲観していない口ぶりであった。韓国でも、盧武鉉大統領やその周辺と外交当局の間には、対日政策の「硬さ」においてかなりの温度差があると言われる。日本外務省も、事務総長選での「潘支持」を最大限カードとして利用しながら、日韓関係の打開を模索して行く戦略だろう。ポスト小泉とポスト盧武鉉の両方をにらんだ着地点の探り合いが、日韓の外交当局の間で次第に激しさを増して来るものと見られる。

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