ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第5回(韓国)与野党の大統領候補と会見(2006年2月) の記事一覧に戻る

激越さへの懐かしさ(山本 之聞)2009年9月

 今回の一連の訪問取材で一番、印象に残っているのは全州でおこなわれたウリ党議長候補の合同演説会だ。各候補者は、全身を熱くし独特の抑揚をつけて激しく言葉を吐いた。何を言っているかは分からなかったが、その激越さは、かっての日本の明治期における自由民権運動の壮士もこういう風であったのではないかと懐かしさを感じた。 
 また、これに反応する支持者のボルテージも高く、日本の政党大会では見られない迫力に圧倒された。この演説会を経ておこなわれたウリ党の党員投票でチョン・ドンヨン氏が議長に選ばれた。チョン氏はかの演説会で元キャスターらしい歯切れの良さと雄弁ぶりを披露していた。来年の大統領選に向け、あの会場で寄せられた支持者の熱さを背負ってトップを目指すことになる。
 ところでノ・ムヒョン大統領は、3月1日の独立記念式典で日本の憲法改正の動きを強い調子で批判した。韓国の政治風土にある独特の“熱さ”は、日本がらみになると一段と激しさを増す。こうした対日電圧の高さはウリ党もハンナラ党も同じだろう。
 又、我々は韓国の代表的な輸出産業である半導体、鉄鋼、自動車の工場などを視察、経済の興隆ぶりを目の当たりにした。
 しかし、現地の案内では、今の政権の日本色薄めの流儀の反映なのか、資金、技術レベルでの日本とのかかわりについてあまり言及がなかったように記憶している。
 ところで7年ぶりに訪れたソウルは、経済成長による勢い、また、我々と懇談したイ・ミョンパク・ソウル市長の手腕もあってか、以前より街並みは整備されて明るくスマートとなり、道行く人も豊かに見えた。
 我々の宿舎となったホテルの売店では、日本の女性観光客が最大のお得意様となり、これに若い店員が日本語でニコニコと応対していた。去年は、日韓両国の人の往来が400万人を超えた。
 お互い、国家としては越えがたい政治的障壁もまだあるが、民間レベルでは隣町感覚で行き来できる関係になっていることを実感してきました。

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