会見リポート
2025年02月05日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「ハマス・イスラエル衝突」(9)~停戦合意後のパレスチナ、中東情勢~ 立山良司・防衛大学校名誉教授
会見メモ
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡り、3段階から成る停戦合意の第1段階が発効してから、2週間あまりが経過した。トランプ米大統領が、パレスチナ・ガザ地区をアメリカが「引き取る」と発言。再建の間はパレスチナ人をガザの域外に移住させると述べたことへの波紋が広がる中で、立山良司・防衛大学校名誉教授が登壇。停戦合意に至った背景をイスラエル、ハマスの内情から解説するとともに、戦後統治のあり方をどうみるのか、シリア、イランなど中東情勢に与える影響、パレスチナ問題の今後について話した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員 (NHK)
会見リポート
停戦維持の保証「全くない」
上松 亮介 (共同通信社外信部)
15カ月以上にわたり戦闘が続いたパレスチナ自治区ガザでの停戦に、イスラエルとイスラム組織ハマスが合意した。しかし双方の相互不信は根強く、「薄氷の停戦」とも言われる。防衛大の立山良司名誉教授は5日、日本記者クラブで会見し「停戦が維持される保証は全くない」と訴えた。
立山氏は、今回の停戦の大きな特徴として、国連平和維持活動(PKO)が入らないなど、治安維持・停戦監視の国際的メカニズムがないことを指摘した。懸念材料として、政権維持のため極右に配慮し戦闘の再開を望むイスラエルのネタニヤフ首相の存在も挙げた。
一方、イスラエルでは長期の戦闘で社会的負担は増し人質解放の動きが高まっており、ハマスにとっては戦闘再開が住民の離反を招きかねないと解説。イスラエルとサウジアラビアの関係正常化を望むトランプ米大統領の圧力にも触れ「もろさはあるが、(双方で)停戦を維持しようという力学が働いている」と分析した。
国連機関のデータに基づき、イスラエルによる激しい攻撃で「がれきの山」と化したガザの被害状況も紹介した。東京都より小さいガザに、東北3県を中心に起きた東日本大震災をはるかに上回る量のがれきが堆積する様子は「想像を絶する」と語った。
こうしたガザの現状に対し、1月末にトランプ氏は「地獄のようだ」と表現し、住民受け入れを周辺国に要請した。くしくも立山氏の会見が開かれたのは、トランプ氏がネタニヤフ氏との会談後、記者会見で再びガザ住民の域外移住をぶち上げた直後だった。
立山氏は、1948年のイスラエル建国でパレスチナ難民が生まれた「ナクバ(大惨事)」を引き合いに、「ガザの人々はかつて住んでいた地域に出稼ぎに行けても、戻ることはできないということを70年間経験してきた」と強調。パレスチナ人の存在を無視したトランプ氏の発言に疑問符を付けた。
ゲスト / Guest
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立山良司 / Ryoji TATEYAMA
防衛大学校名誉教授 / professor emeritus, National Defense Academy
研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突
研究会回数:9