会見リポート
2025年01月31日
13:00 〜 14:00
10階ホール
「戦後80年を問う」(1) 中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表)
会見メモ
8月15日で第2次世界大戦の終結から80年を迎えるのを前に、戦後日本のあり方を振り返り、今後の針路を問うシリーズ企画「戦後80年を問う」をスタートした。
第1回ゲストとして、中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表)が登壇した。軍縮や安全保障を巡る状況、春に控える核禁止条約の第3回締約国会議、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会の課題を説明。その上で今年で設立80周年を迎える国連の在り方について「国際秩序の回復に向けて、現在の国際情勢を反映した組織へ改革していく節目の年にするべきだ」と述べた。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員 (読売新聞社)
会見リポート
国連の機能 取り戻せるか
鴨志田 郷 (NHK解説主幹)
「今年は日本にとっては戦後80年、被爆80年ですが、国連にとっては創設80年です」
帰国の都度、日本記者クラブに立ち寄っていただいてきた中満氏は、今回こう切り出した。国連の現状は、その創設メンバーの大国が自ら国連憲章を公然と破り、平和の番人であるはずの安保理も常任理事国の拒否権の応酬によって機能不全に陥って久しい。ウクライナへの侵攻を開き直るロシアしかり、イスラエルのガザ攻撃をなりふり構わずかばうアメリカしかり。そのアメリカに発足したトランプ政権は、いきなりパリ協定からの離脱やWHOからの脱退を宣言して、国際協調に思い切り背を向けている。中満氏は今年を、国連が世界の平和や安定に資する本来の機能を取り戻すための試練の年と位置づける。安保理については、昨今の大国の横暴に耐えかねたグローバルサウスの不満が噴出し、去年国連総会で採択された「未来のための協定」にも安保理改革は喫緊の課題だと明記されたことに注目する。
また自ら所管する軍縮分野においては、ロシアのウクライナ侵攻以降、核の威嚇や抑止が盛んに論じられる現状を改めて憂いつつも、同時に核への危機感が世界で広く共有され、終末時計が過去最短の残り89秒に進められたことや、ノーベル平和賞に日本被団協が選ばれたことも、そんな問題意識の表れだと指摘する。さらにNPTの議論が停滞する中でも、3月に開かれる核兵器禁止条約の3回目の締約国会議で、核の非人道性を訴え続ける意義を強調した。そして・・・日本が会議にオブザーバーとして出席するなら、国連も締約国も諸手を挙げて歓迎しますと、笑顔で締めくくった。
ウクライナ戦争やトランプ治世の逆風を前にして、国連を「軌道修正」するのは容易であるはずがない。それでも「決してあきらめない」をモットーにするという中満氏の、終始前向きな姿勢がまぶしかった。
ゲスト / Guest
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中満泉 / Izumi NAKAMITSU
国連事務次長(軍縮担当上級代表) / UN Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs
研究テーマ:戦後80年を問う
研究会回数:1