会見リポート
2024年11月13日
16:00 〜 17:00
9階会見場
「日本の死刑制度について考える懇話会」会見
会見メモ
死刑制度の在り方について議論してきた「日本の死刑制度について考える懇話会」が13日、報告書をとりまとめ、会見に臨んだ。
現行の日本の死刑制度には、刑種としてだけでなく運用面でも数多くの問題をはらんでおり現状のまま存続させてはならないという認識のもと、早急に国会や内閣のもとに死刑制度の存廃や改革・改善に関する検討を行う公的な会議体を設置するよう求めた。今後、衆議院、参議院、政府に提出したいとしている。
会見には、座長を務めた井田良・中央大学大学院教授と座長代行の笹倉香奈・甲南大学法学部教授のほか、委員の片山徒有・「被害者と司法を考える会」代表、神津里季生・前日本労働組合総連合会(連合)会長、中本和洋・元日本弁護士連合会会長、事務局長の川村百合さんが登壇。
20年にわたり被害者への支援や受刑者への特別改善指導を行ってきた片山さんは、「(自身の活動の中で)刑事裁判が思っていたよりも精密手法でないことに気づかされた」「特別改善指導で(受刑者が)変わる姿を見てきた。人は立ち直れるという実感をもっている」とし、「死刑制度はなくなってもらいたいと思う」と述べた。
同懇話会は今年2月に日本弁護士連合会の呼びかけに応じた有識者により設立された。計16人のメンバーには学識経験者や国会議員、法曹関係者として検事総長、警察庁長官経験者がいる。
司会 井田香奈子 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)
「日本の死刑制度について考える懇話会」報告書(2024/11/13)
※写真左から井田さん、笹倉さん、片山さん、神津さん、中本さん、川村さん
会見リポート
制度検討の会議体を提言
桐山 桂一 (東京新聞論説委員)
「日本の死刑制度について考える懇話会」(座長=井田良・中央大大学院教授)が11月13日、政府への提言を報告書にまとめ、日本記者クラブで公表した。
同懇話会は学者や国会議員、経済団体代表、元検事総長、元警察庁長官、犯罪被害者遺族らが委員を務めた。死刑制度について「現状のまま放置できない」との認識で、国会や政府に検討のための会議体を設けるよう提言している。
結論が出るまでの間は、死刑執行の停止も検討すべきだとも求めた。井田座長は「これまでの死刑論議は存置派と廃止派が意見をぶつけ合うだけだった。今回はどれだけ理解し合えるか」が狙いだと強調した。
同懇話会は日弁連の呼びかけで今年2月に設立された。確定死刑囚だった袴田巖さんの「再審無罪」が確定したばかりだ。戦後5件目の死刑台からの帰還だった。神ならぬ人が行う裁判には誤判、「無辜の処刑」の危険性があることは明白である。
死刑事件ばかりでなく、絶えない冤罪事件を受けて、日弁連は2016年に「死刑廃止」を掲げる宣言を採択した。そもそも欧州を中心に事実上、海外の7割超の国で既に死刑が廃止されている。提言は国連が死刑存置国に対し死刑停止を求めている現状も踏まえている。
世論調査では死刑制度を支持する結果が出るものの、「迷い」を含む民意を反映しているか疑問視した。「被害感情や処罰感情が死刑制度の根拠となるかは別の問題だ」とも述べた。また、一般的に死刑制度自体が犯罪抑止効果を持つと信じられているものの、「科学的な証明がない状況だ」と退けてもいる。
死刑確定者の処遇、執行の手続きや執行方法などについても検討すべきだと指摘。少なくとも現行制度は憲法の人権保障の思想と合致しないのではないかと問題提起した。
ゲスト / Guest
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井田良 / Makoto IDA
座長(中央大学大学院教授、前法制審議会会長)
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笹倉香奈 / Kana SASAKURA
座長代行(甲南大学法学部教授)
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片山徒有 / Tadaari KATAYAMA
委員(「被害者と司法を考える会」代表)
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神津里季生 / Rikio KOZU
委員(前日本労働組合総連合会会長)
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中本和洋 / Kazuhiro NAKAMOTO
委員(元日本弁護士連合会会長)
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川村百合 / Yuri KAWAMURA
事務局長(ゆり綜合法律事務所弁護士)