2024年11月27日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(22) 増田雅之・防衛研究所中国研究室長

会見メモ

中国の習近平政権が台湾への軍事的な圧力を強めている。

10月には人民解放軍が台湾を包囲するかたちで大規模な軍事演習を実施し、その後、習氏は軍の拠点を相次いで視察した。一方、米国の大統領選挙ではトランプ氏が当選し、2期目に入る。

防衛省防衛研究所で中国の安全保障問題を研究する増田雅之・防衛研究所中国研究室長が、経済、軍事、外交において米中関係の構図がどう変化してきたのかをベースに米中関係の現在地を解説した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員 (日本経済新聞社)


会見リポート

中国の「トランプ不安」

金子 秀敏 (毎日新聞社客員編集委員)

 米国では、トランプ次期大統領が対中強硬派を次々に政権幹部に指名している。中国では、国防相など高級軍人失脚の情報が絶えない。

 そんな米国、中国を最近訪問した増田氏は現地の空気を語った。中国では「トランプ次期政権への不安」が高まっている。米国では、台湾海峡より南シナ海の軍事衝突を懸念している。双方とも今後の米中関係が不安定になると予想している。

 増田氏は「米中関係の構図」を経済、軍事、政治のパワーバランスの変化で解説した。

 中国は胡錦濤政権の末期、高度成長政策で米国に次ぐ経済力を得た。同時に、軍事力の増強によって政治力も高まると、米中対等の「新型大国関係」を米国に迫った。

 次の習近平政権になり経済成長はピークを過ぎたが、核弾頭、海軍艦艇の増強などを続けた結果、中国周辺地域では米軍に勝る軍事力を保有し、米中間の緊張が高まった。政治的にも「一帯一路」構想など中国は大国主義を強めた。

 これに対し、米国は、オバマ政権以降、同盟国、パートナー国との連携で巻き返しを図る。第1次トランプ政権は「関税戦争」と先端技術を使った戦略製品の供給を規制する経済安保戦略で中国経済に打撃を与え、バイデン政権もこれを継承した。

 増田氏は、米中関係が共存を目指す競争の関係から政治、軍事的対決に変わる転換点を中国共産党第19回党大会開催と第1次トランプ政権成立の2017年頃だと指摘する。その後、新型コロナの発生、ウクライナ戦争の勃発によって中国の孤立化と経済悪化が進んだ。

 中国は7月の党中央委員会全体会議で鄧小平時代の「改革開放」路線に戻り、習氏の党内の権威は低下したと言われてる。今、中国で高まっているという「トランプ不安」は、習政権で米国との共存関係に戻れるのかという不安ではないだろうか。


ゲスト / Guest

  • 増田雅之 / Masayuki MASUDA

    防衛研究所中国研究室長 / Head, China Division, Regional Studies Department of National Institute for Defense Studies

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:22

ページのTOPへ